世界各国に住むライターが、現地に暮らすARIA世代の女性にインタビューし、その国・地域ならではのキャリア設計、家族の形、趣味やトレンドなどを紹介する連載。今回は、コロナ禍で観光客激減のカンボジア・シェムリアップから、女性たちの奮闘をお届けします。

 カンボジアの観光都市シェムリアップは、世界遺産アンコールワットのお膝元として、ピーク時には年間190万人の観光客を迎え入れてきました。格安のゲストハウスから高級大型リゾートホテルまで多くの宿泊施設が林立し、外国人向けレストランやバーの並ぶパブストリートは、毎晩遅くまで多くの観光客でにぎわっていました。

 そんなシェムリアップにおいて新型コロナウイルスの脅威は、観光業界に携わる人のみならず、市井の人々の生活にも大きな打撃を与えました。勤務先のホテルやレストランが休業や閉業する中で、実家に戻り畑仕事に従事する人、フードデリバリーのドライバーへ転職する人、全く畑違いのビジネスを始めようとする人など、それぞれが生活の糧を求めて試行錯誤を始めました。

ホテリエ一筋で築いてきたキャリアがコロナ禍で停止

 テン・ヴァンナロァットさんは、正に観光業界ど真ん中の、ホテル勤務22年のキャリアを持つホテリエ(ホテルウーマン)。18歳の頃から「働くというのはどういうことなのか」が知りたくて、シェムリアップ市内のホテルを渡り歩き、受付業務から始まり2020年にはマーケティング部の部長を務めるまでになりました。

 ホテル業務に携わり、接客とは、サービスとは、スタッフを取りまとめるとはと、ホテリエとしてお客さまに貢献できることを常に考え働いてきたそのキャリアが、新型コロナにより突然の休職。同時に3人目の妊娠もあり、外出せず家に籠もる日が続きました。

 仕事がしたいと思いながらも動けず悶々(もんもん)と考える日々。観光客が来ず仕事は無いが、これから3人目も生まれる、生活していかなければならない。さぁどうする? そこでヴァンナロァットさんが導き出した答えは、「人はどんな状況下でも食べる!」でした。

シェムリアップを東西に走る国道6号線沿いに立地するヴァンナロァットさんの店、トゥモーダ・レストラン
シェムリアップを東西に走る国道6号線沿いに立地するヴァンナロァットさんの店、トゥモーダ・レストラン