世界各国に住むライターが、現地に暮らすARIA世代の女性にインタビューをし、その国・地域ならではの事情を紹介する連載。今回は香港に暮らして13年、『週末香港大人手帖』の著者・甲斐美也子さんが、香港で働く女性たちの「一食入魂」のランチ事情に迫ります。エネルギッシュな食い倒れの街では、誰もがよく働きよく食べる。伝統と効率が融合しためりはりあるランチ生活とは?

 エスカレーターのスピードまでもが日本よりはるかに速い香港。そんな香港の女性といえば、効率を愛し、結果を重視しつつも、情に厚くて、面倒見が抜群。家事や子どもの送迎は家政婦にお任せして、心置きなくキャリアにまい進。共働きが当たり前で、女性の地位が高いという、日本人からすると羨ましいような環境にあります。総じて食いしん坊な彼女たち。限られた時間の中でどんなランチを食べているのでしょうか。

どんどん起業して、がんがん食べる!

 周囲にいる香港女性を見ていると「自分のボスは自分」という独立心が強く、資本金がほぼゼロで簡単に会社設立できることもあり、若くして起業もするし、副業を複数持つのも当たり前。「失敗したらまたやり直せばいい」とあっけらかん。必要に応じて長時間労働もいとわないけれど、周囲に合わせて居残りなどという概念は皆無なのが香港の人々の特徴です。

昼からガッツリ派には「焼味飯」と呼ばれるローストグースや叉焼豚(チャーシュー)などを載せたご飯が人気。高級ブランド店のレジで店員さんが食べているのを見かけることも
昼からガッツリ派には「焼味飯」と呼ばれるローストグースや叉焼豚(チャーシュー)などを載せたご飯が人気。高級ブランド店のレジで店員さんが食べているのを見かけることも

 そんなしっかり者で働き者な彼女たちに共通する特徴が「食への強い執着」。普段から、キャリア女性にインタビューしていると、筆者の得意分野が食と知った途端に「あの店はもう行った? どのメニューがおいしかった?」と逆取材をされていることがよくあるのです。

 今回、香港女性のランチ事情を改めて探ってみると、浮かび上がってきたのは「多忙でも食生活にメリハリをつける」、「伝統と効率を融合」、「ヘルシー志向の高まり」という3つの傾向でした。

老舗粥店のランチタイムにも多くの女性客が集まる。定番はピータンと豚肉の粥と油条と呼ばれる揚げパン。一方でベジタリアン、ビーガンなどのヘルシー志向も高まっている。最新のビーガンカフェでは、プラントベース(植物由来)を使った日本風焼きギョーザも提供
老舗粥店のランチタイムにも多くの女性客が集まる。定番はピータンと豚肉の粥と油条と呼ばれる揚げパン。一方でベジタリアン、ビーガンなどのヘルシー志向も高まっている。最新のビーガンカフェでは、プラントベース(植物由来)を使った日本風焼きギョーザも提供
老舗粥店のランチタイムにも多くの女性客が集まる。定番はピータンと豚肉の粥と油条と呼ばれる揚げパン。一方でベジタリアン、ビーガンなどのヘルシー志向も高まっている。最新のビーガンカフェでは、プラントベース(植物由来)を使った日本風焼きギョーザも提供