世界各国に住むライターが、現地に暮らすARIA世代の女性にインタビューをし、その国・地域ならではのキャリア設計、家族の形、趣味やトレンドなどを紹介する連載。今回は、フィジーで留学生のための語学学校を経営する永崎裕麻さんが、マルチに活動の場を広げる女性の奮闘を伝えてくれます。

幸福度の高いフィジーに移住して気づいた大切なもの

 日本から約7000km離れた南の楽園、フィジー。南太平洋上、オーストラリアの東、ニュージーランドの北に浮かぶ島国です。日本からの直行便だと約9時間で到着します。約330の島から成り立っていて、国土の総面積は日本の四国ほどと小さな国です。

 南の島といえば日本人ツーリストはよくハワイに行きますが、オーストラリア人やニュージーランド人はフィジーでバカンスを楽しみます。フィジーは観光立国であり、最近は「世界幸福度調査」(ギャラップ・インターナショナルとWINによる共同調査)において、何度も世界一に輝いている幸福先進国でもあります。

 今回はそんなフィジーで、日本人留学生向け英語学校カラーズの教頭先生をしながら、ソーシャルグッドな活動を連続的に立ち上げるなど、コロナ禍に苦しむ観光立国フィジーを盛り上げ続けているテッサ・イーストゲートさん(40代、 一児の母)に話を聞きました。

 彼女はフィリピンで生まれ、フィジー人男性と結婚し、2009年からフィジーに移住しています。人口が1億人を越える大国フィリピンから、人口が1/100以下(90万人程度)の小国フィジーに移住して感じたことを聞いてみました。

 「移住前はフィリピンの都市で働き、スピード感のある暮らしに慣れていたので、フィジーに来た当初はだいぶ発展が遅れているという印象でした。しかし、移住して1年がたった頃、大切なことに気がつきました。それはフィリピンでの生活に欠けていたものでした。

 フィリピンにいた頃は日々忙しいのが当たり前で、常にストレスがかかる生活。週末など、たまにリラックスしたり、特に目的がないことをしたりすると、罪悪感のようなものを感じていました。忙しいことは名誉なこと。病気になっても働き続けることは誇りでした。

 しかしフィジーで生活していると、のんびりすることに罪悪感を持つことはなく、むしろその時間が私にとってはとても大切なものなんだと気づくことができました」

 今のテッサさんはゆったりした時間も満喫し、充電しながら、そのエネルギーをいろいろな活動に注いでいます。まずは本業である「留学生向けの教育業」に興味を持った理由を尋ねてみました。

学校の同僚たちと。右から2人目がテッサさん
学校の同僚たちと。右から2人目がテッサさん

 「異文化交流から学べることがとても多いことに興味を持ちました。教壇に立つこともありますが、生徒たちに教えている感覚はありません。日々、生徒たちと共に学んでいる感覚です。

 日本人の生徒たちが日本で体験しているものを耳で聞き、疑似体験することが楽しいです。例えば、『日常的に発生する地震に慣れていく感覚』や『韓国のポップカルチャーに夢中になる感覚』『通勤電車で疲弊する感覚』など。

 また、彼らといろんなテーマで議論することも刺激的です。『日本の皇室と英国の王室の違い』や『第2次世界大戦についての日本人の認識』などについてです。

 異文化交流することによって、視野を広げ、見方を深め、共感を拡張することは人生における最高の体験の1つだと感じています」