日本で働き、オーストラリアで家族と過ごす「往復生活」をしている小島慶子さん。子育ても終盤にさしかかり、「これまでとは違う新たな一歩」を踏み出しつつある小島さんが、新たな気付きや挑戦を語っていきます。今回のARIAな一歩は、「元彼との再会」。

「選ばなかった道」への思いは女にも男にも…

 前回のコラム「小島慶子 選ばなかった道を今さら後悔するなんて…!」を読んだ知人たちから、感想が寄せられた。「あの気持ちは分かる。実は自分も……」と打ち明けてくれたのだ。

 「私の中にもあるんです、回転ドア!」と語ってくれたのは、ある出版社に勤める女性。親戚の集まりなんかに行くと、男たちがたいてい仕事自慢やら人脈自慢やらをしている。そこに入ると心の中の「俺」がついつい彼らと張り合ってしまってなんだか疲れる……そこで女性たちのほうに行くと、今度は子どもの自慢や夫の話。するとドアがクルッと回って「女の子」が登場し、これまたついつい幸せのマウンティング大会に参戦してしまう……「私、どっちに行ってもしんどいんです」と語る彼女はいつも至って柔和で理知的で、そんな葛藤を抱えているようには見えなかっただけに、とても親近感を覚えた。

 女性だけではない。ある通信社に勤める男性は、総合商社に内定していたという。その話を子どもにしたら「商社に行けばよかったのに」と言われてしまって、なんとも複雑な気持ちになったとのこと。今の仕事に満足していなければ、なおのこと悔やまれるだろう。

 小さな番組制作会社で働いているある男性は、海外の大学を出たあと、大手放送局や新聞社に内定したものの、面白そうだからと芸能プロダクションに入社。でも結局体質が合わなくて転職した。「今の仕事は楽しいが、それでもふと、あのとき違う会社を選んでいたら今頃どうしていただろうと考えることがある」と語るのを聞いていた周囲の人は「いやいや、放送局なんて入ったらきっと今頃めちゃめちゃ感じ悪いギョーカイオヤジになっていたはず」「新聞社よりこの仕事の方が面白いよ」などと言ったのだが、もちろん、感じ悪くもならず仕事がつまらなくもなかった可能性も十分あるのを全員分かっているのだ。手にしなかったブドウはたぶん、酸っぱくなかったんだよね。