日本で働き、オーストラリアで家族と過ごす「往復生活」をしている小島慶子さん(コロナ禍で日豪の行き来が難しくなり、ひとり日本にとどまって家族と会えない生活はまもなく2年に…)。子育ても終盤にさしかかり、「これまでとは違う新たな一歩」を踏み出しつつある小島さんが、新たな気づきや挑戦を語っていきます。今回のARIAな一歩は、「キロギアッパ」。

2年連続、日本で独りぼっちの年越しが決定

 12月1日から、ワクチン2回接種済みでPCR検査の陰性証明があれば日本人はオーストラリアへの出入りが事実上自由になると発表された。しかしそれを目前にして南アフリカでオミクロン株が報告され、オーストラリアに入国しようとした渡航者からも検出された。入国基準はこれからまた厳しくなるだろう。

 実は、私の家族が暮らす西オーストラリア州だけは、以前からずっと「鎖国」している。マーク・マクガワン州首相は厳格な州境管理体制を敷いており、国や他州が11月以降次々と規制を緩める中、西オーストラリア州では全住民の9割がワクチンの2回接種を終えるまで、州境を開放しないと発表した。これには国内で激しい非難もあったが、今回の新変異株の出現により、同州の慎重で厳格な姿勢が正しいことが示されたと州首相は意を強くしている。

 彼の地に入れる海外からの渡航者数は極めて限られており、チケットは既に売り切れている。というわけで、私は今年も、日本で独りぼっちの年越しとなることが決定した。ほぼ丸2年、息子たちと夫と会っていないことになる。

 しかしその厳格な鎖国体制のおかげで、11月末現在の時点で大学生の長男は週末にクラブに行って踊れるし、次男はマスクなしで電車通学し、学校帰りに友達と街をぶらつくことができる。カフェやレストランもにぎわっている。200万人都市の州都パースで1人でも感染者が出れば、すさまじい速さで立ち寄り箇所が特定・公表され、市中感染の懸念があれば素早くプチロックダウンを決行。毎日1万人規模で無料PCR検査を行い、新規感染者0の日が続くと段階的に規制を緩め、またいつもの日常に戻る。これをこまめに繰り返しているため、普段の暮らしはほぼコロナ前と変わらないのだ。

 住民はその恩恵を実感しており、マクガワン州首相の支持率は非常に高い。パースは、もしかしたら今のところは地球上で最も安全な場所の一つかもしれない。私も州首相の判断を支持している。

 まあだから、自身が締め出しを食らってもこらえよう、と涙をのんだ。昨年の1月以来、南極観測隊や宇宙ステーション滞在者を同志と思って、家族と会えない寂しさに耐えてきたが、南極は1年、宇宙だって半年で要員交代している。だから今は、遣隋使を思って孤独に耐えている。隋に留学するとなったら数年がかりで、無事に戻れるかも分からない。少なくとも私は船が沈む心配はしないで済むし、ビデオ通話だってあるのだから、飛鳥時代の家族よりもはるかに恵まれている。

昨冬買った寄せ植えのミニシクラメンが、夏には完全に枯死して土に還(かえ)ったのに見事に復活して花を咲かせました。まさか今年も一緒に越冬することになるとは思わなかったけど、再会できてめちゃくちゃうれしい……
昨冬買った寄せ植えのミニシクラメンが、夏には完全に枯死して土に還(かえ)ったのに見事に復活して花を咲かせました。まさか今年も一緒に越冬することになるとは思わなかったけど、再会できてめちゃくちゃうれしい……