日本で働き、オーストラリアで家族と過ごす「往復生活」をしている小島慶子さん。子育ても終盤にさしかかり、「これまでとは違う新たな一歩」を踏み出しつつある小島さんの、新たな気付きや挑戦を語っていきます。今回のARIAな一歩は、「今さら後悔」

今月の一歩 今さら後悔

「玉の輿の可能性ゼロ」の自分はかっこいい

 40代も後半になると、もしもあのとき……と思うことも多い。大抵はもう生々しい後悔なんか伴わない、手の届かない思い出を古い映画でも見るみたいに振り返るだけだ。でも、今回は違った。

 私はずっと、男を肩書で選ばない女が上等なのだと思っていた。恋人を肩書や年収で選ばずに済むように、自分でそれらを手に入れた。就活を勝ち抜き、一部上場企業の正社員になって、世間の何倍も高いお給料を男性と対等に稼ぐようになった。自分は男選びでそろばんをはじかなくちゃいけない惨めな女じゃなくて、好きになった男がたとえ文無しでも結婚できる自由を手に入れたんだ、と誇らしかった。

 世間からは“女子アナ”は玉の輿(こし)狙いだといわれていた頃だ。当時で言うと野球選手や青年実業家と言われる人たちと結婚するのがアガリだった。しかし私はスポーツの仕事と一切縁がなく、合コンにも縁がなく、身の回りにいるのはテレビ業界の人ばかりだった。だから最初に付き合ったのは同じ会社の社員で、次に付き合ったのも業界関係者で、その次に付き合ったのが制作会社の社員だった。

 つまりどれも玉の輿の可能性がゼロだった。それをかっこいいと自負していた。どう? 私、世間が期待するようなあざとい女じゃないでしょ、と。いったい誰に対してそんな意地を張っていたのか。

 で、結局結婚した相手は制作会社の社員で、共働きでそれなりに充実した生活を送った。子どもも二人生まれて、都心にも住めて、恵まれた暮らしだった。私が会社を辞めて、彼が仕事を辞めて、世帯収入が激減して、でもあえて海外に引っ越して、一人で働き続けてきた。それもなかなか大変だけど面白いと言えば面白い人生だ。