日本で働き、オーストラリアで家族と過ごす「往復生活」をしている小島慶子さん。子育ても終盤にさしかかり、「これまでとは違う新たな一歩」を踏み出しつつある小島さんが、新たな気付きや挑戦を語っていきます。今回のARIAな一歩は、「男たちの見捨てられ不安問題」。

蓮舫議員の離婚報道から見える、「男たちの見捨てられ不安」

 蓮舫議員の離婚を揶揄(やゆ)する記事をいくつか読んだ。男性向けの媒体では「傲慢で身勝手な女」と言いたげだ。男たちは、離婚を恐れているのだろう。子育てが終わり、精神的に自立した妻に別れを切り出されることを心底恐れている。そうされかねないことを分かっているから「男を捨てる強い女はクソ女」というスティグマ=烙印(らくいん)を必死で押そうとするのだろう。

 残念ながら、いかにネットで醜悪な記事が拡散されようとも、女たちはもうその手には乗らない。「男を捨てる女は、人でなしとそしりを受けるぞ!」とわめき立てる男尊女卑信者たちを無言で一瞥(いちべつ)するだけだ。言ってろ。そうやっていつまでも、意のままにならない女に呪いをかけているがいい。もはやその呪いには何の力もなく、惨めな負け惜しみでしかないのだから。

 男女格差大国ニッポンを変えるには、今後この「男たちの見捨てられ不安」にいかに対処するかがカギなのではないかと思う。

 AERA dot.の取材に答えた蓮舫氏の元夫でジャーナリストの村田信之氏は、妻に別れを切り出されたことは予想外だったと述べている。しかし、地方を拠点にしたい自分と選挙区である東京をベースにする蓮舫氏とは人生観が違うので「卒婚」に同意したと語る。27年間の結婚生活は楽しかったし、今も子どもたちや蓮舫氏とは連絡を取り合い、関係性は変わらないとも。

 「価値観の違いは出会ったその日から存在するもの。そうじゃないと多様性が失われてしまう」と考える村田氏だったからこそ、多忙な蓮舫氏との関係を維持できたのだろう。その考えに至るまでに夫婦で多くの課題を乗り越えたであろうことも想像できる。二人にしか分からない機微があるはずだ。そうしたことへの想像力を働かせず、夫を捨てた冷血女というストーリーに仕立て上げるゴシップの書き手たちは、おそらくそれが多くの男性読者を安心させると知っているのだろう。

 蓮舫氏のケースに限らず、離婚を決意した女性を悪者にしたがるのは、自立した人生観を持たず、妻というお世話係に見捨てられたら生きていけない男たちである。