長男は16歳、次男ももうすぐ14歳。私の人さし指と同じ大きさだった足が今や28センチと27.5センチだ。日に日に世界が広がり、何度も親を振り返りながら離れて行こうとしている息子たち。最後のスべスベぷよぷよ地帯だった次男のほっぺたも骨張ってきて、もう自分の二の腕をもむしかない。寂しい。寂しいけどちょっとうれしい。あと4年たてば、二人とも大学生。手が離れる。5年たったら学費は一人分! 負担半減だ。そして8年たてば、ついに学費稼ぎの役務から解放される。8年なんて、振り返ればあっという間じゃないか。8年後、私は55歳。運良く生きていたら、その先の人生は劇的に変わるはずだ。もはや子ども最優先ではなくなるのだ。

もう一度、自分のために生きる日々が待ち遠しい

 「バルセロナ、おいでよ、家族で。うち古いけど、広いから雑魚寝できるよ」。女友達は頼もしい。息子たちを連れて行ったらきっと喜ぶだろう。旅は知り合いがいるところに行くに限るという人生の鉄則を学ぶいい機会でもある。でもその前にさっと一人で行ってみたい気もする。「ねえ、今週末時間できたから、行っていい?」なんてメッセージして。気ままな海外一人旅。ああ、かんばしい自由の香りがする。バルセロナの美しい朝焼けを見ながら、気ままに泳ぎたい。近所のスーパーへ買い物に行って、宿代がわりに洗濯して掃除機かけて、住んでる気分で通りを眺めたい。異国の空の下で、まだ誰の妻でもママでもなかった頃の高校時代の思い出を語り合ったら、私たち、自分が誰だったか思い出せるかな。

 「うん、行くよ絶対」「待ってる」「待ってて!」。お互いに社交辞令は言わない。その日から私は、心待ちにするようになった。バルセロナ行きを? それとももう一度、自分のために生きる日々をかな。

 行く当てがあるって、なんて楽しいんだろう。遠くに愉快な友達がいて、まだ見ぬ世界が待っている。決心さえつけば、クレジットカード1枚でいつもと反対方向に飛んでいけるんだ。北半球のはるかかなたへ。