日本で働き、オーストラリアで家族と過ごす「往復生活」をしている小島慶子さん。子育ても終盤にさしかかり、「これまでとは違う新たな一歩」を踏み出しつつある小島さんが、新たな気付きや挑戦を語っていきます。今回のARIAな一歩は、「人が持つ4つの資源」。

 また通勤が始まって、気分が落ち込んでいる人も多いと思う。わざわざ会社に行かなくてもほとんどの仕事ができることを知ってしまった今、定時の通勤はもはや会社への忠誠を示す儀式でしかない。むなしい儀式のために人生の貴重な時間を費やすことに疑問を覚え、転職を考える人もいるだろう。地方移住も視野に入るかもしれない。これまで会社に供出するだけだった「時間」というリソースをもっと有効に使う方法があると、みんな気づいてしまったのだ。

コロナ危機で失ったもの、手に入ったもの

 人には4つの資源があるとよく息子たちにも話している。時間と、お金と、才能と、信用。お金が増えない代わりに時間が手に入ることも、時間がない時にお金で解決できることもある。信用がないから才能で勝負する時もあるし、才能には自信がないけど信用で乗り切る場面もある。4つの中で一番育てるのが難しく、失ったら取り戻すのに大変な手間がかかるのは信用で、育ててもすぐに結果が見えるわけでもないので価値にも気づきにくい。

 この4つの組み合わせを考えながら暮らしていると、予想外の変化が起きた際にも冷静に対処しやすい。今回、改めてそれを実感した。

 コロナ危機で移動の自由が奪われ、お金の損失も大きいとなると、失ったものばかりを考えて気持ちが落ち込む。しかし新しい生活に慣れてくると、次第に手に入ったものにも目が向くようになる。通勤から解放され、仕事と生活が地続きになったことで、それまでの「仕事」が様式化されたものであったことに気づいた人も多いだろう。定時出社とかスーツを着るとか化粧をするとか名刺交換するとか会議とかハンコを押すとか、これ全部要らなくない? ……では、自分の仕事って何だろう。やりたいことって、できることって何だろう。今、高められる価値はないだろうか? 本当はずっとやりたかったことを、今ならできるのかも。

巣ごもり中に一度すべて咲ききって、見事2巡目の花が咲いたバラとアルストロメリア。また剪定(せんてい)したら、秋までにもう一度花をつけるかも?
巣ごもり中に一度すべて咲ききって、見事2巡目の花が咲いたバラとアルストロメリア。また剪定(せんてい)したら、秋までにもう一度花をつけるかも?