日本で働き、オーストラリアで家族と過ごす「往復生活」をしている小島慶子さん。子育ても終盤にさしかかり、「これまでとは違う新たな一歩」を踏み出しつつある小島さんが、新たな気付きや挑戦を語っていきます。今回のARIAな一歩は、「コロナ危機下の女性リーダー」。

 「戦争という例えは使うべきではないと思います。世界中の人をケアし、ウイルスの拡散や経済的苦境から守ることができたら、それが成功でしょう」

 4月25日に放送されたETV特集『緊急対談 パンデミックが変える世界 ユヴァル・ノア・ハラリとの60分』の中で、イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏は、新型コロナウイルスとの戦いについてこう述べた。

 自国だけではなく、他国の人もケアして命と暮らしを守らなければ、人類がパンデミックや気候危機を生き延びることはできないという氏の指摘には、いま多くの人が実感を込めてうなずくだろう。

ウイルスとの戦いで存在感を示すリーダーの共通点

 新型コロナウイルスの抑え込みに成功しているリーダーには女性が多いと話題になっている。もちろん、韓国やオーストラリアなど男性リーダーの例もあるが、世界の首脳に占める女性の数は極めて少ないにもかかわらず、ニュージーランド、ドイツ、台湾、フィンランド、アイスランドなど、コロナ対策で評価されているリーダーには確かに女性が目立つ。

 共通しているのは、科学を重視し、先送りにせずに決断を下し、国民に明晰(めいせき)で共感性の高いメッセージを出していること。意思決定において人命が最優先であること。そのような優れた頭脳とリーダーシップの持ち主が性別で不利になることなくリーダーに選ばれる社会は、ウイルスとの戦いにおいて「強い社会」であることを示している。

 意思決定層が男性によって占められ、人口の半分を占める女性がリーダーになるチャンスを得られない社会では、そうでない社会に比べて、有能な人材が半分しか生かされないということになる。つまりその分、危機に弱い。台湾のコロナウイルス対策で「徹底的な透明性」を掲げてITを駆使したさまざまな施策の実現に貢献し、世界の注目を集めているデジタル担当閣僚のオードリー・タンは30代のトランスジェンダー女性。いまだに家父長制的な発想と男尊女卑の土壌が残る日本で彼女のような閣僚が誕生するのはいつのことだろうかと考えるとため息が出る。コロナ対策の結果は見ての通りだ。

 女性リーダーたちの振る舞いにおいて重要なのは「ケア」の視点である。失われる命を一つでも減らし、病に倒れた人や仕事を失った人を一人にしないという視点に立って迅速に政策を打ち出せば、犠牲を最小限に抑えることができる。