日本で働き、オーストラリアで家族と過ごす「往復生活」をしている小島慶子さん。子育ても終盤にさしかかり、「これまでとは違う新たな一歩」を踏み出しつつある小島さんが、新たな気付きや挑戦を語っていきます。今回のARIAな一歩は、「夫婦の景色」。

 前回「エア離婚」の話を書いたら、予想以上に大きな反応があった。友人知人がメッセージをくれたり、仕事仲間が「いやーうちも」などと打ち明けてくれたり。それでまた新たに取材を受けたりもしたのだが、いかに今「この先どうする?」と悩んでいる夫婦が多いかを思い知らされた。個人的な感触では、女性の方がより具体的に考え、前向きに捉えている傾向が強いように思う。男性は戸惑ったり不安がったり、思考停止になってしまいがちのようだ。

女性は、モノローグを重ねて生きている

 これは恐らく、夫婦間で文脈の共有ができていないのではないかと思う。女性の側は、夫婦関係を見直すに至るまでの起点と転換点と最終的な決断のポイントが、1つのストーリーの上に乗っている。ずっと夫婦関係について考えてきたからだ。出産や育児など生活の大きな変化を経験し、キャリアを中断したり、諦めたりした人もいる。必然的に「私の人生はこれでいいだろうか」と悩む機会が多い。「本当にこの男でよかったのか?」という潜在的な不安があるので、いつも「やっぱりよかった」「しまった違ったかも」と気持ちは揺れている。葛藤の中でモノローグを重ねて生きているのだ。

 そのような心理には、男女格差が大きく、仕事と生活の両立がしづらい社会構造が影響しているだろう。主たる馬車馬労働者が男性と想定されている社会では、経済的にも人生の選択の自由度においても、女性は配偶者の影響を受けやすい。仕事中心で家庭を顧みない夫に絶望し、何のために家族になったのかと自問する孤独な夜も多いだろう。

1月はタスマニアへ10日間の旅。高山からビーチまで多彩な自然を楽しみました。こちら、山の頂のコテージの前で息子たちと。撮影・夫
1月はタスマニアへ10日間の旅。高山からビーチまで多彩な自然を楽しみました。こちら、山の頂のコテージの前で息子たちと。撮影・夫