家族会議で夫が発した言葉は…

 他人の話なら「その男はやめておけ」と言う。だけど夫は、家族なのである。子どもたちの父親なのである。そして私たち家族は、一緒にオーストラリア移住という冒険の旅をしているチームである。とても強い信頼関係を築いている。そのメンバーである夫と別れたいと思うのは人でなしかと悩むうちに、リアルに死にたくなってきた。これは危険である。そこで、ついに私は家族会議を開いた。息子たちは夫婦に何が起きているかを理解した上で「パパを許せないというママの気持ちはもっともだけど、パパは自分たちにとってはいい父親でもあるので、家族の形はもうしばらくこのままにしてほしい」と言った。それを聞いてどう思うかと尋ねたら、夫は「よく分からないんだ」と言った。なんだそれは。今さら自分探しか。子どもたちがこんなにも頭を使って涙と血の通った言葉を絞り出したというのに、君の答えは哀れみを誘うつぶやきだけか。

 彼には言葉がない。言葉にすることから逃げ続けた結果がこうだ。私にできるのは、その世代間連鎖を断ち切ることだ。というわけで、私は息子たちには言葉にすることから逃げないでほしい、思考から逃げないでほしいと折に触れて伝えている。

 これは何も私の夫の個人的な弱さの問題だけではなく、ジェンダーの問題と深く結びついている。

(下)に続きます。

文/小島慶子