日本で働き、オーストラリアで家族と過ごす「往復生活」をしている小島慶子さん(コロナ禍で日豪の行き来が難しくなり、ひとり日本にとどまって家族と会えない生活はついに丸2年に)。子育ても終盤にさしかかり、「これまでとは違う新たな一歩」を踏み出しつつある小島さんが、新たな気づきや挑戦を語っていきます。今回のARIAな一歩は、「贈り物」。

 冬は贈り物の季節。今シーズン、あなたの心に残ったのはどんなギフトだっただろうか。

 私は、お中元お歳暮なんかの義理はとっくの昔にやめてしまったし、友達の誕生日だって思い出したり忘れたりで、オトナのマナーの落第生だ。でも、人にものを贈るのが好きだ。何かのお祝いとかちょっとしたお土産なんかを選ぶのは、とても楽しい。

大切な人へのおわびの品 さてどうする?

 おわびの品は、中でも頭を使う。昨年、お世話になっている方が主催する活動に参加するのがスケジュール上どうしても難しくなってしまった。そこで銀座の鳩居堂で便箋と封筒を選んで、おわび状を書いた。さて、手紙に添える品を何にしようか、とあれこれ考える。フカフカのタオルとか? ミニブランケットとか? いや、でも形が残るものだとなんか「おわびしたことをずっと覚えておいてくださいね!」って言いたげで重たいかも。やっぱり、消えるものがいいか。けど、あのおうちにはきっと、お中元やお歳暮の上等なお菓子やお茶があり余っているはず……お花だとすぐに傷んじゃうし、おわびなのに華やかなのも変だよね。ぬおお、悩ましいなあと、うなりながらお店をいくつも見て歩いた。

 実は、この時間がとても楽しいのだ。ひたすら、相手のことを考え続ける。いろんなシチュエーションを想像し、事情を推測する。その費やしたエナジーの分だけ、相手に近づいた気がするから不思議だ。

 先方は多忙な人だから、きっといつもお疲れのはずだ。そこで大好きなアロマのお店をのぞいてみた。香りの贈り物は難しい。好みが違えば、もらった方は持て余してしまう。不快に思うことすらあるかもしれない。だけど、香りと気持ちって、かなり近い物質のような気がするのだ。よく、瞑想(めいそう)する時にお香をたいたりするけれど、胸の内に湧き上がる思いには、それぞれ匂いがあるような気がする。