蓋を開けてみなきゃ、人にはどんな悩みがあるのか分からない。笑顔でステキなあのARIAさんも、40~50年も生きてりゃ悩みの1つや2つありますよね。さて、今日はどんなお悩みが出てくるのでしょうか――。今回は50歳を目前にし、「今の会社のままでいいのか?」という思いにとらわれる女性がご登場。答えてくれたのは、日経WOMAN編集長を卒業後も、働く女性を応援する活動を続ける作家・ジャーナリストの麓幸子さんです。


回答者:麓 幸子さん(作家・ジャーナリスト・元日経WOMAN編集長)


好きなことではなく、嫌なことを探す

 私は2年前の2018年、30年以上勤めた会社を57歳で退社し、故郷にUターンして、現在は全く違う業界で働いています。50代後半でキャリアとライフが大きくシフトしたわけですが、その経験を基に、花火さんには2つのことをお勧めしたいと思います。

 これからの目標が見えない、どう生きたらいいか分からないというなら、まずは、自分が嫌だと思うことを見つけましょう。そしてそれをやめてみましょう。「好きなことを見つけましょう」というと、どうもハードルが高くなりがちなので、まずは、自分が何が嫌いなのか、嫌だと思うかを明らかにしましょう。

 私は、56歳で会社から「フェロー」という新たに創設された肩書を与えられました。他社のフェローを見ると、ノーベル賞を受賞した田中耕一さんなど素晴らしい方々ばかり。もちろん自分はそういうフェローの足元にも及ばないことは十分自覚しておりますが、それでも専門職の最高位である肩書を頂き、光栄でした。しかし、その半面、私は「キャリア・プラトー」も感じました。プラトーとは、組織内で昇進の可能性がなくなったり、自分自身が行き詰まったと感じたりして、本人のモチベーションが低下してキャリアが停滞することを指します。

 「部下の評価もしなくていい、組織のマネジメントも必要ない」「(売り上げも利益も気にすることなく)自分の好きなことをしていい」……例えば、あなたがそういう状態になったらどう思いますか? 「予算達成のプレッシャーもない、部下との関係で悩むこともない、なんてラッキー!」と思う人が多いかもしれませんが、私はそういう状態が自分にフィットしなかったんですね。

あなたがいるのはコンフォートゾーン?

 「コンフォートゾーンからいでよ」と言った女性エグゼクティブがいました。「プレッシャーやストレスもない居心地のいい職場にいるなら、それは『そこを出なさい』というサインよ」と。なぜならそこには成長がないからです。新たな自分の可能性も見つけることもできません。

 私はプレッシャーもストレスもない状態が嫌いでした。停滞を感じたままで何もせずにいることが嫌でした。もちろん、その場所がとても好きで成長する人もいるでしょう。でも、私の場合は違いました。ですから新たな道を探そうと思ったのです。

 次に、「3年後、何をしていると自分が一番ワクワクしているか」と考えてみてください。

 私は新たな道を探そうと思ったときに、エグゼクティブコーチングを受けました。コーチングを受けるのは初めてなので、それ自体もとても楽しいものでしたが、コーチとのセッションで、上記の問いを受けたときにとてもユニークな経験をしました。