蓋を開けてみなきゃ、人にはどんな悩みがあるのか分からない。笑顔でステキなあのARIAさんも、40~50年も生きてりゃ悩みの1つや2つありますよね。さて、きょうはどんなお悩みが出てくるのでしょうか――。今回は「子どもが家を出てから気持ちが切り替えられない」という51歳女性に、オリンピック3大会メダリストの内村航平選手を育てた母で体操競技指導者の内村周子さんがお答えします。


回答者:内村周子さん(体操競技指導者)


 こういう話はよく聞きますね。体は元気でも心が悩んでいると心技体のバランスが崩れます。体操競技と一緒です。

 ただ、気持ちを切り替えるというのは、ちょっと違うなと私は思うんです。これは脳の慣れの問題なんです。今まで子育てと仕事の忙しい生活できていたら、それに慣れていますよね。新しい生活に脳が慣れていないから疲れるんです。

 例えば歩き慣れた道なら別に何ともないのに、初めての道を歩くと距離は同じでも疲れますよね。だからといって無理に切り替えようとしなくてもいいんじゃないでしょうか。

 私の場合も、長男の航平(五輪3大会メダリストの内村航平さん)と長女の春日(はるひ)の子育て中は毎日が戦争のようでした。でも、ただただ楽しかった。航平が「体操留学」のために長崎の家を離れ、東京の高校に進学したときは寂しい思いをしました。もう毎日弁当を作らなくていい、毎朝起こさなくてもいい。でも、することが減ったから楽になるというものではなく、精神的には疲れていたと思います。

 その頃は弁当を冷凍して航平に送ったり、手紙を書いたり、いつ帰ってくるかを楽しみに待ったりしていました。あえて忙しくして暇をなくすのもいいんじゃないでしょうか。私自身はいつも時間がもったいなくて、暇な時間があるのは嫌なタイプなんです。

 新しい生活に慣れながら、なるべく脳が喜ぶようなことをして心技体の一致を待ちましょう。無理せず自然に任せれば、やりたいことが何か見えてくると思います。