東京五輪を終え、全日本女子バレーボールの監督を退任した中田久美さんの学び直しに迫る後編。東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム(東大EMP)で中田さんはどのようなことを学んだのでしょうか。

(上)女子バレー監督辞め、東大で頭と心を鍛え直した
(下)東京五輪後、東大に通い週8冊の専門書に挑んだ ←今回はココ

「正反対の発想」にピンときた

―― そもそも東大EMPとは、どんな講座なんですか。

中田久美さん(以下、中田) 東京大学の保有する知的財産をすべて投入し、将来、多様な価値観を持って組織をリードしそうな人を対象に、これまで海外の大学でも提供してこなかったような、高レベルで全人格的な総合能力を形成させる「唯一無二の場」を提供する、として2008年に創設されたそうです。

 私がこの講座に引かれたのは、東京大学というと「知のトップ」というイメージだったのですが、その教養主義を否定し、問題解決能力を磨くのではなくその上流にある「課題設定能力」を鍛えるという、正反対の発想にピンときたんです。

 日本代表チームを率いて、世界と戦うにはこれまでの経験や実績、判断では通用しないことが分かりました。刻々と変わる状況に対応するには、目先の課題を解決するのではなく、これから起き得るさまざまなことを想定し、その対処法も考える能力を身に付ける必要性を感じたんです。

中田久美
中田久美
なかだ・くみ/1965年、東京都生まれ。13歳からバレーを始め、当時史上最年少の15歳で全日本に選出された。ロサンゼルス、ソウル、バルセロナ五輪に出場後、引退。2008年イタリアプロリーグセリエAに所属するチームのコーチに就任。日本人女性初の海外バレーボールチームの指導者に。11年に久光製薬スプリングスのコーチ、翌年には監督に就任。女子チームで初となる3冠を達成。17年から全日本女子バレーボールの監督を務め、21年に退任