メダル至上主義に愕然「私はがっかりさせてしまったんだ」

長崎 独立したJOCは五輪憲章に基づき、スポーツを通じて人間の尊厳の保持や平和運動を担おうとしていた。そこにシンパシーを感じたし、JOCからも選手代表として組織の中で意見をバンバン言ってほしいと。でも、実際私に求められたのは、役員が海外出張に行った際や国際会議での通訳でした。

 米国で6年暮らしたとはいえ、通訳の能力はまた別物。自分の力量のなさを痛感したのと、JOC自体がメダル至上主義から変わらないことに愕然(がくぜん)としたんです。「ああ、(選手時代にメダルを取れなかった)私はこの人たちをがっかりさせてしまった人間なんだ」って(笑)。今でこそ「アスリートファースト」という言葉が広まっていますが、当時は役員ファースト。2年後に辞めてしまいました。

ロス五輪で4位に入賞したときは16歳。「当時は思春期でしたし、周りが期待する金メダル以外に自分の存在価値を証明するものはないと信じ込んでいたので、未来への扉がバンと閉じられてしまった感じがしました。今でも月に1度はそのときの夢を見ます」
ロス五輪で4位に入賞したときは16歳。「当時は思春期でしたし、周りが期待する金メダル以外に自分の存在価値を証明するものはないと信じ込んでいたので、未来への扉がバンと閉じられてしまった感じがしました。今でも月に1度はそのときの夢を見ます」

―― 退職後、JOC職員だった春日良一さん(現スポーツコンサルタント)と結婚。2人でスポーツコンサルティング会社を起業しました。

長崎 春日はスポーツイベントの企画、コメンテーター、執筆など手広くやっていますが、私のメーンは、乳幼児と親が一緒にプールに入るプログラム「ベビーアクアティクス」です。もう2020年で22年目になりますね。

 26歳で長女を授かり、たまたま暑い日に子どもと一緒にプールに入りたいと考え、ベビースイミングの教室に行ってみました。そこで想像もしなかった娘の表情に出合ったんです。初めはこわばった顔をしていたけど、だんだんニコニコし、そのうちキャッキャとはしゃぎ、しまいには水にぷかぷか浮かびながら、気持ちよさそうに眠ったり。