メダル至上主義に愕然「私はがっかりさせてしまったんだ」
長崎 独立したJOCは五輪憲章に基づき、スポーツを通じて人間の尊厳の保持や平和運動を担おうとしていた。そこにシンパシーを感じたし、JOCからも選手代表として組織の中で意見をバンバン言ってほしいと。でも、実際私に求められたのは、役員が海外出張に行った際や国際会議での通訳でした。
米国で6年暮らしたとはいえ、通訳の能力はまた別物。自分の力量のなさを痛感したのと、JOC自体がメダル至上主義から変わらないことに愕然(がくぜん)としたんです。「ああ、(選手時代にメダルを取れなかった)私はこの人たちをがっかりさせてしまった人間なんだ」って(笑)。今でこそ「アスリートファースト」という言葉が広まっていますが、当時は役員ファースト。2年後に辞めてしまいました。
―― 退職後、JOC職員だった春日良一さん(現スポーツコンサルタント)と結婚。2人でスポーツコンサルティング会社を起業しました。
長崎 春日はスポーツイベントの企画、コメンテーター、執筆など手広くやっていますが、私のメーンは、乳幼児と親が一緒にプールに入るプログラム「ベビーアクアティクス」です。もう2020年で22年目になりますね。
26歳で長女を授かり、たまたま暑い日に子どもと一緒にプールに入りたいと考え、ベビースイミングの教室に行ってみました。そこで想像もしなかった娘の表情に出合ったんです。初めはこわばった顔をしていたけど、だんだんニコニコし、そのうちキャッキャとはしゃぎ、しまいには水にぷかぷか浮かびながら、気持ちよさそうに眠ったり。