負けた試合は「成長のヒント」だと気づいた

杉山 それまで周りが用意してくれた環境の中で、一生懸命努力して結果を出すのが私の役目、と信じ込んでいた。自分の心に向き合い、葛藤することもなかった。だから、シングルスでなかなか勝てなくなると「結果が出ないなら辞めたい」という安直な思いにつながったんです。でも、母の一言で目が覚めた。

 負け試合は、私に不足していることを明確に突き付けられるということ。成長するためのヒントをもらったということでもある。逆に言うなら、勝ったとしてもその時の自分が完璧とは限らないと気づきました。試合結果に一喜一憂するのではなく、そこに自分が成長するためのどんなヒントがあるか、気づくことの方が大切と考えるようになりました。

「テニスを通してレジリエンス(回復力、復元力)を高めることができました。変化の激しいこれからの世界を生き抜くために、一番必要な力だと思っています」
「テニスを通してレジリエンス(回復力、復元力)を高めることができました。変化の激しいこれからの世界を生き抜くために、一番必要な力だと思っています」

 そんな頃、たまたま読んでいた本で知ったのが「遊戯三昧(ゆげざんまい)」という禅の言葉。好きなことであっても、そこには楽しいこともつらいこともある。だからやることそのものを楽しめ、という教えです。挫折からはい上がってたどり着いた自分の境地そのものだった。以来、「遊戯三昧」は私の座右の銘にもなりました。