アスリートと社会との距離を縮めたい

高橋 きっかけは2020年の「24時間テレビ」(日本テレビ系列)。ランナーが5km走るごとに10万円を寄付するという「募金ラン」の企画を私が持ち込んだのですが、直前の練習でケガをしてしまい、目標の100kmを走り切れるかどうか不安でした。すると「チームQ」に参加してくれた吉田沙保里ちゃんや野口みずきちゃんが「Qちゃんが走れない分は私たちが走るから」って。

 自分がリーダーだからしっかりやり遂げなければ、と弱音を吐けないと思っていたのですが、苦しいときは人に頼っていいんだと心が軽くなりました。彼女たちの姿を見て元気をもらい116km完走できました。募金も番組史上2番目の金額が集まったと聞きうれしかったですね。

―― 東京オリンピック・パラリンピック開催まで2カ月を切りました。関係者としてどうサポートしていきますか。

高橋 正直、2つの思いの間で揺れています。近くで選手たちの頑張りを見てきたので、みんなに応援される形で舞台を整えてあげたいという思いがある一方で、社会の一員としてはこのコロナ禍で多くの人の不安や医療従事者の負担を考えると、「オリパラは特別」とは言えない。開催の実施や中止に関して私には決定権も発言力もないのですが、会議では自分の意見を伝えていきたいと思っています。また、一番気になっているのが、アスリート、社会、組織委員会の距離が離れてしまっていること。その距離を何とか少しでも縮められないかと思案しているところです。

JOC、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の理事を務める高橋さん(写真右、AP/アフロ)
JOC、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の理事を務める高橋さん(写真右、AP/アフロ)