落車時の記憶は今もない 妹に「どちらさまですか?」

―― 16年に大けがをした時のことは記憶にありますか。

杉浦 全く無いんです。薬剤師時代に趣味で行っていた自転車のロードレース中に落車し、ドクターヘリで運ばれたらしいんですけど、当時の記憶がなくて……。脳挫傷、外傷性くも膜下出血、頭蓋骨・鎖骨・肩甲骨を粉砕骨折、そして三半規管も損傷しました。頭部や上半身がぐちゃぐちゃな状態だったと思います。

 懸命な治療のおかげで一命はとりとめたものの、記憶を失ってしまいました。母の顔はかろうじて覚えていたらしいですが、妹には「どちらさまですか?」と言ったそうです。父は私の第一声に相当衝撃を受けたみたいで、いまだに何を言ったのか教えてくれません(笑)。

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取材・文/吉井妙子 写真/洞澤佐智子