年齢を重ねることは誇りだったけど…

杉浦 先ほども言いましたが、薬剤師の頃は年齢を重ねることが誇りでした。経験を積めば積むほど患者さんの気持ちに寄り添うことができ、きめ細かいアドバイスもできるようになるからです。しかし、スポーツ界では年齢が若ければ若いほど期待も大きく、支援も手厚いなど体制が違う。スポーツ界では年齢がネガティブワードになることを、身をもって体験していたのです。

 それに高次脳機能障害は、一般の人からは、見た目ではハンディが分からない。それなら、私が出場するCクラスは、身体の切断や機能障害を持つ若いパラアスリートが出場した方が障害者全体のためになるのではないか、と悩みました。

 私がパラリンピックに出場していいのかと悶々(もんもん)としている時、トラック競技で指導を受けているコーチから「49歳と50歳なんて誤差の範囲だよ」と言われ、気持ちがストンと軽くなった。同時に、数十万人と言われる高次脳機能障害に苦しむ人たちの代表者として、私が頑張ろうというモチベーションも湧いてきたんです。

「『やっぱり高次脳機能障害の人にはできないよね』と思われるのは悲しい。高次脳機能障害でもここまでできる、ということをもっと広めていきたいです」
「『やっぱり高次脳機能障害の人にはできないよね』と思われるのは悲しい。高次脳機能障害でもここまでできる、ということをもっと広めていきたいです」