井村コーチからもらったペンダント

武田 最後のアテネ五輪に挑む過程では、井村先生と何度も議論を繰り返しました。アテネ五輪直前には思いがけず、井村先生からインフィニティ(無限)の形をしたペンダントを頂いて。自分にはまだ無限の可能性があると言われているようで、うれしかったですね。

現役時代、井村コーチによる「選手の限界を突破させる」指導や練習は厳しいものだった。「自分の限界を超えるって恐怖でしかないんですよ。未知の世界ですから」
現役時代、井村コーチによる「選手の限界を突破させる」指導や練習は厳しいものだった。「自分の限界を超えるって恐怖でしかないんですよ。未知の世界ですから」

結婚で変わったセカンドキャリア

―― 引退直後は、マッスルミュージカルや松任谷由実さんのショーに出演していたので、エンターテインメントの世界に突き進んでいくのかと思っていました。

武田 どちらも水の中での演技だったので、違和感なくやれるかなと思ったんです。今の時代はそうではないと思いますが、私たちの時代は現役中に引退後のことを考えるなんて「悪」だと思い込んでいて、24時間競技のことを考えなければ、と。現役中は次のキャリアを考えられなかったので、まずは近いジャンルなら展開しやすいと考えました。それにシンクロで培った努力と、練習で磨かれたストレス耐性があれば、どんな困難も乗り越えられると考えていましたし。

 私のセカンドキャリアが大きく変わったきっかけは、やはり結婚ですね。当時は通産省の官僚だった2歳上の鈴木英敬さんと知り合い、2007年に結婚。夫はむちゃくちゃ明るい人柄で、同じ関西出身というのもあって意気投合したんです。ですが、結婚2週間後に「国政選挙に出馬したい」と言われた時は、ただただびっくり。自分の活動をやめ、東京から三重県に居を移し、夫の選挙活動を手伝いました。