理想や目標を追うよりも、状況に対して柔軟でありたい
大切なものがはっきりしているからこそのしなやかさが、永山さんからは感じられる。今のあり方に辿り着くまで、人生をどうプランニングしてきたかを伺うと、理知的な印象からは意外な答えが返ってきた。「何かを目指すよりも、チャンスや選択肢に出会うたびに反応して生きているようなところがあって。結婚して間もなく子どもを授かった時も、仕事はどうしよう、でもやるしかないと、状況が進むべき道を決めてくれた部分がありますね」
多くの責任や役割を担うARIA世代は、人生100年時代のちょうど中間地点。自分にとって大事なものをどう見極めるか、自分自身の価値をどう定めるかなど、今後の人生に向き合う時期でもある。ただ、多忙に紛れてつい諦めてしまったり、深く考える余裕がないのも事実。この先の道標に対して、どうアクションを起こしていけばいいのだろうか?
「“こうしたい”はあるけど、“こうしなきゃ”とは考えないようにしています。こうしなきゃと思って、思い通りにならなかったらショックだから」
巡ってきたチャンスを掴むため、環境への投資は惜しまない
しかし、ただ流れに身を任せてチャンスを待っているわけではない。いつチャンスがきても対応できるように、環境を整えておくことは大事だと永山さんは言う。具体的には、子育てしながらで働けるようにひとつひとつの効率を上げたことで、事務所スタッフ全員のスピードアップにも繋がり、より多くの仕事を受けられるようになった。また、事務所のスタッフも少しずつ増やした。「より多くのチャンスを掴めたらいいな」という気持ちで、無理ない範囲で環境に投資する。チャンスが巡ってきた時に、反応できる基礎体力だけは鍛えておこうということだ。
出産前に5人だったスタッフは、現在12人。プロジェクトの数もぐんと増えた。その分、忙しさも増したため、実家の母親やシッターも総出で育児をしている。実家からほど近い場所に現在の住居を構えたことも、仕事がしやすい環境づくりへの投資と言える。また、仕事のスケジュールやその時の価値観を、常に周りと共有し、自分の仕事を知ってもらうことも大切にしている。特に、一番身近な家族への共有は怠らない。
「義母は義父に「こんなにすごい仕事をしているのよ」と伝えてくれて、義父もとても喜んでくれているみたいです。私の母は専業主婦ですが、母には昔から「女性が男性と同じように働けることはとても素晴らしいことだ」と言われていました。家事育児の負担はどうしても女性の方が多くなる。それではもったいないから、その部分は私がどうにかするわ、と。チャンスは生かしてほしいと言ってサポートをしてくれるので、本当に有難いですね」