急に「父親と思え」って言われたって無理な話だよ

 夫は初婚。当然子育ての経験はありませんでした。私は10年かけて母親になったけれど、彼は急に10歳の男の子のパパになる。「困惑することもあるかな」とか、「息子も息子で、パパという存在に気を使ってしまう部分もあるかな……」など、最初の頃は2人の関係に敏感になっていた私がいました。

 例えば日々の会話。夫から息子への返事がそっけないと、息子が傷ついたんじゃないかと思ったり、その逆の場合、今度はパパがどう思ったか心配になったり。気をまわして夫には「○○(息子)が、パパのこんなとこがスゴイって言ってたよ」、息子には「パパが、○○のこと気にしてたよ」とか吹き込んでみたり(笑)。

 ちょっとしたことで「本当の親子じゃないから……?」と、一人悶々(もんもん)としてしまうような日もありました。

 ある日、自分の中にある葛藤を素直に夫に話すことにしました。

 すると、「家族といっても人と人。絆や関係性は時間を過ごす中で自然に生まれていくものじゃん? あいつだって急に『父親と思え』って言われたって、それは無理な話だよ」と返されたのです。

 そしてこうも言いました。

 「家族だからっていうよりも『チーム』になればいいんじゃない?」

 そうか。もしかしたら私は家族をうまくまわさなきゃと思うあまり、自分が勝手に思い描く親子像に2人を重ねて、焦って、空回りをしていたのかもしれない。

 夫のそんな考え方に刺激され、いつしか私のモットーは「人間関係は焦らない」になっていました。

「再婚を発表した時の写真。夫と息子と」(鈴木さん提供)
「再婚を発表した時の写真。夫と息子と」(鈴木さん提供)