「慎吾ママ」を世に送り出し、『めざましテレビ』『クイズ$ミリオネア』『サラメシ』など数々の人気番組を手がけてきた放送作家・たむらようこさん。20年前に、従業員が女性だけの放送作家オフィスを設立し、男社会のテレビ業界に一石を投じ続けてきたたむらさんが、テレビではたらく女たちのリアルをありのままにお伝えします。
不覚にもときめいてしまった。入院した病院でのことだ――。
私を担当してくれる担当医チームの中に、ピカピカの1年生くんがいた。現場に出たばかりで、院内のいろんな部署を回って研修している様子。
背は低め。たくさん勉強して医学部に入ったんだろうなって雰囲気のメガネ。毎日、一番に様子を見にきてくれる。「よく眠れましたか?」「熱はないですか?」……型通り。
1年生くんが点滴の針を刺しにきた時は、正直ゲゲっと思った。「ちゃんとできるのか……?」。ふつうにできてホッとした。
ある朝、1年生くんは私に聞いた。「心配ごとはないですか?」。手術前の患者に聞くことになっているセリフなのだろう。しかしこちとら、この病院への入退院歴12年のプロ患者。たぶんキミが、この病院の系列中学校に通ってた頃から、ここをホーム病院としている。私は答えた。
「家にいる時は、心配ごとだらけでしたけどね。もう入院させてもらってますから。周りに看護師さんとか先生もたくさんいますし。今は心配らしい心配はありません」
それを聞いた1年生くん。答え方が分からなかったのだろう。まっすぐに私の目を見てこう言った。「大丈夫です。たむらさんは、僕が守ります」
ズキューン。ラブコメでしか聞かないようなセリフ。守ってくれちゃうのか!
翌日。手術の当日だというのに、私は朝からメガネじゃなくコンタクトをした。手術は無事終わった。1年生くんはその日、現れなかった。
その翌日。手術の傷が痛くて動けないというのに、私は朝からメガネじゃなくコンタクトをした。1年生くんはその日、現れなかった。
そして2週間……その後の入院期間中1度も、1年生くんは現れなかった。おーいっ!!! 私を守れよ~!
コロナ禍で医療の現場は大きく変わってしまった
コラム「テレビではたらく女たち」。今回は、新型コロナ感染拡大期間中に入院すると、どんな風景が見えるのか。親愛なる読者の皆さんに共有したい。
自分の入院のみならず、コロナ禍の時期じゃなければ亡くならずにすんだかもしれない義父のこと、そして崩壊しそうになった実家のことなども書いてみる。
誰かの心の備えになればうれしいし、同じような悲しい目に遭った人とは離れていても支え合いたい。