「慎吾ママ」を世に送り出し、数々の人気番組を手がけてきた放送作家・たむらようこさん。20年前に従業員が女性だけの放送作家オフィスを設立して、男社会のテレビ業界に一石を投じ続けてきたたむらさんが、テレビではたらく女たちのリアルをありのままにお伝えします。

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 2021年3月1日、山田真貴子内閣広報官が辞任した。理由は体調不良と説明されているが、彼女が総務審議官だった2019年、菅義偉首相の長男を含む放送事業会社のメンバーから、1人7万円を超える飲食接待を受けていた問題が無関係だとは思えない。

 山田氏の自身に関する発言「飲み会を絶対に断らない女としてやってきた」がメディアで一斉に取り上げられたが、「断らない女」は悪なのか――。

 「#断らない女」で検索してみたら、一目瞭然だろう。世間的には悪だ。「どんな輝かしい実績も、断らなかったからにしか見えない」「飲み会で得た地位」などと厳しい言葉が並ぶ。

 では、私たちはイヤなことは全部断ってきたのか。断ってここまで仕事を続けてこられたのか。若い世代のことではない。日経ARIAを読んでいる私たちだ。私たちの心の中に「断らない女」は住んでいないと言えるだろうか。

断らなかったのではなく、断れなかったのではないか

 公務員の接待問題は許されることではない。密室でゴニョゴニョと何かが決まっていくのはフェアじゃない。なんなら私は、飲みニュケーションで大事なことが決まっていくテレビ業界への小さな反抗として、20年前、女性ばかりで会社を立ち上げ、今も反抗期が続いている。

 そんな自分でも、山田氏へのバッシングを耳にすると、なんだか心が痛くなる。彼女は断らなかったのではない、断れなかったのではないか。知らないところで大事なことが決まっていくなら、ちゃんと知って、ちゃんと仕事をするために、切り込むために、断れなかったのではないか。

 60歳という彼女が、その時代、まともに仕事をするためには、周囲に必死に合わせるしかなかったのではないか。

山田前広報官へのバッシングを耳にすると、なんだか心が痛くなる(写真:日刊現代/アフロ)
山田前広報官へのバッシングを耳にすると、なんだか心が痛くなる(写真:日刊現代/アフロ)