数々の人気番組を手がけてきた放送作家・たむらようこさん。20年前に従業員が女性だけの放送作家オフィスを設立して、男社会のテレビ業界に一石を投じ続けてきたたむらさんが、テレビではたらく女たちのリアルをありのままにお伝えします。
「お母さんの家庭料理が文句なくうまいとは思わない。失敗マルコゲハンバーグもあれば、うっすい味噌汁のときもある。魚が生焼けだったり、弁当箱の蓋を開けたら、ツーン食えん! ということもある。『お母さん』に象徴される家庭料理に過剰な期待をするのが重いし、時代遅れ……云々(うんぬん)」
その日も彼女は、絶好調で飛ばしまくっていた。我が愛しの「自称クソフェミ」津田環プロデューサー(「テレビ業界も賢く物申せる女ほど、冷や飯を食わされる?」参照)。物申している相手は、ファミリーマートの総菜シリーズ「お母さん食堂」。折しも女子高生3人が「お母さん=料理という役割の押し付けを助長している」として、ファミリーマートを相手に「お母さん食堂」の名称変更を求める署名活動をしたことが話題になった直後だった(*)。
「お母さん=料理」じゃない。我が家のシェフはパパ
そうだそうだ、「お母さん=料理」じゃない。思い起こせば8年ほど前。私は『ママモコモてれび』(日本テレビ系列)という番組のロケ現場に、4歳の息子と一緒にいた。私が番組の構成をしていて、息子は(子役さんが足りず)出演していたからだ。
その場にいたのは洋食で有名な「たいめいけん」の茂出木浩司シェフ。あの焦げたハンバーグ並みに日焼けして真っ黒な人だ。しかし、ちょい悪風の見た目とは裏腹に、とても優しい人で、息子をリラックスさせようと話しかけてくれた。
「お母さんの料理は何がおいしいですか?」
息子はキョトンとして「パパ」と答えた。息子よ、それでは「お母さんの料理 is パパ」ということになってしまう……。
茂出木シェフもキョトンとして、もう一度聞いてくれた。
「お母さんの料理は何が一番おいしいですか? 」
息子は変なことを聞く大人もいるもんだ、みたいに笑いながら答えた。「お料理はパパでしょ!」。現場にびみょ~な空気が流れた。そう、我が家のメインシェフはパパだ。
こんにちは、たむらようこです。コラム「テレビではたらく女たち」、今回のテーマは、ファミマ「お母さん食堂」のキャラクターである香取慎吾さん扮(ふん)する慎吾母と、2000年ごろに「おっはー」のあいさつで人気を博した慎吾ママ、2つのキャラクターについて。両者を比較することで、私たちが歩んできた仕事人生20年が無駄ではなかった、と思える……予定である。