30代でアナウンサーを辞め、弁護士という新しいフィールドに挑戦した菊間千乃さん。自らの手でキャリアを選択してきた菊間さんが、心に響いた言葉や感じた事柄について語ります。今回のテーマは「言葉の力」です。

 言葉は人を死に追いやることもできるし、救うこともできる。

 振り返ると、2020年は「言葉の力」を強く実感した1年でした。だれもが新型コロナウイルスの情報に振り回され、SNSのコメントが荒れて、自殺に追い込まれるようなギスギスした雰囲気もありました。

 マスクをしていない人を非難する「自粛警察」や、ウイルス感染者を非難するような言動もありましたよね。自分の不安を人への攻撃に変えるような生き方は嫌だし、そういう世の中は苦しくて、生きづらいと思います。

 未知のものに立ち向かっていくときに、人を非難したり、自分だけが得することを考えたりする生き方は、いつかブーメランのように自分に返ってきます。医療従事者に感謝するのは当たり前なのに、その子どもたちが保育園に通うことを拒否される事態にも驚きました。

 トイレットペーパーを買い占めるなんて、遠い昔の笑い話のように思っていたけど、同じことが起きるなんて。落ち着いて考えれば、そういった行動の是非は分かるはずなのに、渦中にいるとどんどん視野が狭くなって見えなくなってしまうのです。

「トイレットペーパーを買い占めるようなことが、また起きるなんて考えてもみませんでしたよね」
「トイレットペーパーを買い占めるようなことが、また起きるなんて考えてもみませんでしたよね」

 改めて思うのは、自分軸で動くことの大切さ。予測不能なことが起きたとき、政治は意外と頼りなかった。だれも自分を守ってくれないと思った人も多かったでしょう。自分の家族を守るためには、自分で考え、自分で行動することが大事だと思い知らされました。

 ギスギスした一方で、人に助けられ、人と会うことの大切さを感じることもありました。緊急事態宣言下では自宅で一人、仕事をしていました。それもマイペースで楽しくはあったのですが、宣言が明けて事務所に行ったら抜群に楽しかった。

 人は人に会うことで元気をもらったり、知識や興味を広げてもらったり。一人では生きられないし、一緒にいてくれる人がいることの幸せを改めて認識した1年でもありました。

 コロナ禍で注目されたのがリーダーたちの発信力です。