30代でアナウンサーを辞め、弁護士という新しいフィールドに挑戦した菊間千乃さん。自らの手でキャリアを選択してきた菊間さんが、心に響いた言葉や刺さった事柄について語ります。今回のテーマは「性犯罪」です。

刑法改正から3年、見直しの検討会が開かれている

 ジャーナリストの伊藤詩織さんが勇気を持って自らの性被害をつづった手記を出版したのは2017年。その年、日本では110年ぶりに刑法の性犯罪規定が改正されました。それから3年たった今、見直しのための検討会が開かれています。

 ここで焦点になっていることの一つが「暴行・脅迫」を強制性交等罪成立の要件から外すかどうか。暴力や脅迫を受けなくても「合意がない性行為」は性犯罪とみなされるかどうかが検討されています。

 会社法や著作権法などのビジネス法は毎年のように変わるのに、刑法はなかなか変わりません。前述の2017年の性犯罪に関する改正は実に110年ぶり。それまでは明治時代のままだったわけです。このときの改正で、強制性交等罪から親告罪規定(被害者からの告訴がなければ起訴できない罪)が撤廃され、法定刑の下限も3年から5年に変わりました。

「2017年に改正されるまで、性犯罪に関する刑法は明治時代のままだったんです」
「2017年に改正されるまで、性犯罪に関する刑法は明治時代のままだったんです」

女性大臣の一言で動き始めた刑法改正

 刑法改正のきっかけとなったのは2014年9月、松島みどり法務大臣(当時)の就任会見での発言でした。「女性の心身を傷つけ、人生を狂わせるおそれのある強姦罪の法定刑が懲役3年以上で、強盗が懲役5年以上はおかしい」。この言葉を受けて、刑法改正のための検討会が設置されたのです。

 当時の議論で結論が出なかったことは、3年後に必要があれば見直すと附則(ふそく)に定められました。現在の検討会が動きだしたのも、この附則のおかげ。さらに検討会を実施するにあたっては、森まさこ法務大臣(当時)もリーダーシップを発揮しました。

 この問題で、女性が法務大臣になったことはやはり大きいと思います。トップに女性がいることで、具体的に法律を変えることにつながっていく。これから経団連の会長が女性になったり、大企業の社長にもっと女性が増えたりしていけば政治も女性の声を無視できなくなるでしょう。