30代でアナウンサーを辞め、弁護士という新しいフィールドに挑戦した菊間千乃さん。自らの手でキャリアを選択してきた菊間さんが、心に響いた言葉や感じた事柄について語ります。今回のテーマは「ジョブチェンジ」です。

やりたいことは一つに絞らなくてもいい

 私自身がアナウンサーから弁護士へとジョブチェンジをしたこともあり、キャリアセミナーに講師として声がかかることがあります。

 学生向けのセミナーでは、「これからは終身雇用が当たり前ではなくなるから、やりたいことがたくさんある人は、全部やればいい。何かを諦める必要なんてない」とお話しします。一つしか選べないと思うから、就職活動も悩むのではないかしら? 人生長いのですから、やりたいことがあるなら一つに絞らず、全部やっていい。その順番だけ考えて、20代しかできないことから始めていけばいいと思います。

 限られた時間の中であれば誰しも頑張れるはず。30歳で次のフィールドに行くんだと思っていれば、それまでの間に覚えること、吸収しなくちゃいけないことは何だろうって、おのずと自身のキャリアの進め方に能動的になるのではないでしょうか。

今の場所にとどまるか、動いてチャレンジするか

 これは学生に限らず、40代でも50代でも同じです。今さら、なんて思うことはありません。やりたいことがあるのであれば、挑戦したほうがいい。子どもの手が離れたと思ったら、今度は自身の健康の問題が出てきたり、親の介護が始まったり、やりたいことに集中できないというARIA世代の方も多いと思います。だからこそ、挑戦できる環境であるのなら、そして挑戦したいと思うのならば、悩まずに行動できるときに行動したほうが良いと思うのです。

 今の場所にとどまるか、動いてチャレンジするか。私も32歳でアナウンサーの仕事をしながらロースクールに入ったときは、ずっと悩んでいました。仕事と勉強を両立させながら、「このままでいいのか」「会社を辞めたほうがいいのか」って。それだけ両立は大変でした。

フジテレビに入社したとき、人事リポートに「アナウンサーを10年やったら司法試験を受ける」と書きました。弁護士の資格を持ってキャスターをしたかった
フジテレビに入社したとき、人事リポートに「アナウンサーを10年やったら司法試験を受ける」と書きました。弁護士の資格を持ってキャスターをしたかった

 ロースクールに通い始めたときは、弁護士の資格を取ってアナウンサーの仕事に生かせたらいいなと思っていたんです。でも、ロースクールでいろいろな先生から話を聞くうちに、ただ知識で終わらせるのではなく、法律という武器を使って仕事をしてみたいと思うようになりました。結局、35歳のときに会社を辞め、司法試験の勉強だけに集中すると決意しました。

 私もそうでしたが、実際に動く決断をするときは、面白いくらいに扉がパーッと開いていくんです。