30代でアナウンサーを辞め、弁護士という新しいフィールドに挑戦した菊間千乃さん。自らの手でキャリアを選択してきた菊間さんが、心に響いた言葉や感じた事柄について語ります。今回のテーマは「大人の学び」です。菊間さんがワインを学び始めたのは、ある意外な理由からでした。

暗記しただけの知識はすぐに薄れてしまう

 「大人の学び」というと、資格を取ることや大学院に通うことをイメージする人が多いと思います。学ぶことはいいことだし、私も好きなことや興味のあることを夢中で学んできましたが、大学院に通うことや資格を取ること自体が目的になってしまうのはもったいない。

 日本のたいていの資格試験は暗記ですよね。問題集があって、学習してある程度覚えれば取得できる。でも、暗記して覚えたことがどれだけ自分に残っているか、それがどれだけ生かされているかというと疑問でもあります。学んでいる間は楽しくて、資格を取ったときもうれしいけど、しばらくすると暗記しただけの知識は薄れていく。頑張って資格を取ったのに、うまく道が開けないと、「何のために取ったんだろう」とむなしくなり、じゃあまた別の資格を目指そう、となる。

 資格が自分の学びのモチベーションになり、取得をすることで、キャリアのステップアップができればいいですが、どんな資格も、取得したとたんに明るい未来が開けるわけではないですよね。弁護士だって、資格を取ることはスタート地点に立っただけ。待っているだけで仕事が舞い込んでくるわけではありません。

「弁護士だって資格を取ったからすぐに仕事が来るほど甘いものではないんです」
「弁護士だって資格を取ったからすぐに仕事が来るほど甘いものではないんです」

 ワインスクールにも資格取得を目的にしたコースがあります。私もワインエキスパートの資格を持っていますが、ただ資格を取っただけでは、半年ぐらいすると結構な知識を忘れているわけです。スクールで講師をしないかというお誘いをいただいたとき、 最初は「えっ?」と思いましたが、教えることで復習しながら知識が定着していくなら一石二鳥かも、と思ってお引き受けしました。