30代でアナウンサーを辞め、弁護士という新しいフィールドに挑戦した菊間千乃さん。自らの手でキャリアを選択してきた菊間さんが、心に響いた言葉や感じた事柄について語ります。今回のテーマは「引き出す力」です。

自分と違う意見を言われることはありがたい

 弁護士事務所に所属していると、「独立しないんですか」と聞かれることがよくありますが、私は事務所に所属してチームで働くことが楽しいと感じています。自分と違う意見を言ってもらえるのがうれしいんです。チーム内で違う意見をぶつけ合うことは、クライアントへの最適解につながるし、自分では気づかなかった視点を教えてもらえる。同じことをしていても、一人ではたどり着けない境地があります。

 女性も年齢を重ねたり、ポジションが上がったりすると、いつの間にか周りが意見を言ってくれなくなることがあります。前職のアナウンサー時代のことですが、20代の頃は会議でどんどん発言をしても周りからいろいろな意見が聞けた。それが30代になったら、何を言っても年下のディレクターは「そうですよね」「分かりました」みたいな反応ばかり。

 そのときに、周りが反対意見を言ってくれなくなることは「怖いな」と思いました。それ以降は、意識的に「~と思うけど、どう思います?」と、自分の意見を言いつつ、相手の考えも聞くようにしました。上の立場の人ほど、自分から聞きにいく姿勢が必要だと思います。

 コロナ禍で孤立しやすい今だからこそ、チームの良さを感じている人はたくさんいるでしょう。オフラインの会議であれば、お互いの顔が見えていますから、自分も何か発言しなければという緊張感があり、自然と発言が飛び交います。それが、オンラインだと、参加している人は一歩引いてしまい、ファシリテーター1人が引っ張って終わる――なんてことがよくありませんか。そうするとチームの関係性も希薄になる。オンラインではオフライン以上に相手の話を引き出す力や聞く力が大事になると思います。

「違う意見を聞くことができるからチームで動くことが楽しい」
「違う意見を聞くことができるからチームで動くことが楽しい」

 女性初の米副大統領カマラ・ハリス氏が就任後、雑誌のインタビューにこう答えていました。「ただ同じ部屋にいるだけではダメ。その部屋の誰かが、事を荒立てず丸く収めておこうとするような状況は真の団結ではない。そこにいる全員の意思が尊敬され、同等の発言力をもっていなければ」と。本当にその通りだと思います。ただ、全員が平等に発言できる環境をつくることって、難しいですよね。