2020年までに、指導的地位に女性が占める割合を少なくても30%程度にすることを目標としている政府。女性管理職を増やす取り組みや、ARIA世代の女性が長期的なキャリアプランを描けるような支援を行う企業も増えています。そこで、女性管理職研修をはじめ、女性の活躍推進を積極的に行っている企業を取材し、各企業の取り組みを紹介します。

(上)部下のピンチは「私のチャンス」 JALの自律型研修 ←今回はココ
(下)JALの研修「相手を変えるのではなく、自分を変えよ」

 連載第3回は日本航空(JAL)、客室本部の研修を取り上げます。客室本部では管理職の女性比率が9割以上。2018年から管理職を対象にした「自律型リーダー研修」を導入しました。上編では、客室本部客室業務部業務グループマネジャーの谷口由紀さんと客室本部客室品質企画部業務グループマネジャーの家成百合子さんに、管理職研修をはじめとする取り組みや今後の人材育成について聞きました。

同じ目標へ進むためには新たな管理職研修が必要

―― 管理職をターゲットにした研修を新しく始めた背景を教えてください。

家成百合子さん(以下、敬称略) 今までは管理職研修というと新任管理職向けのものしかなく、客室本部内で何年も管理職を担っている人を対象にしたものは、ほとんどありませんでした。

 研修の必要性を感じたのは、私が客室乗務員を育成する「ライン部門」の管理職から、客室乗務員の業務をサポートする「間接部門」に異動したのがきっかけ。ライン部門も間接部門も同じ目的のために働いているはずなのに、「これは間接部門の仕事ですよね」などと協力関係があまり見られず、溝を感じたんです。

 自分で考えて行動する「自律型の人材(人財)」を育てようとよく言われるものの、自律した人財のイメージが明確ではないまま、人財育成を行っていました。例えるなら旅行には行きたいけれど、目的地が決まっていないような状況だったんです。「自律した人材」像をみんなで共有できれば、もっと自主的に仕事に取り組め、それが皆で同じ目標に向かって進むことにつながるのではないか……そう考えて、新しい研修を始めたいと思いました。

家成さん「客室本部の2つの部門の間に壁を感じたことが、自律型人財を育てる管理職研修を始めたいと思ったきっかけでした」
家成さん「客室本部の2つの部門の間に壁を感じたことが、自律型人財を育てる管理職研修を始めたいと思ったきっかけでした」

オーダーメードで組み立てた「自律型リーダー研修」

―― 具体的にはどのように研修を企画したのでしょうか?

家成 まずは教育関係の展示会(EXPO)に何回か行って、自分がやりたいと思う研修がないか探しました。良いと思った会社の研修を受けたのですが、内容が一般的な講義形式だと、元気で積極的な客室本部の女性たちには、ちょっと退屈かなと……(笑)そんなとき、たまたま出合ったのが「自律型リーダー研修」です。