―― 具体的には、どのようにメンタリングプログラムを実施しているのですか?

佐々木 オリックスでは、世代を決めて強制的に参加させるなど、型にはまった形で行うのではなく、緩くつながる形をとっています。嫌々やっても効果がないと考えているからです。参加対象は今後組織のマネジメントを行うポジションになっていく課長クラスの女性社員ですが、制度を利用するのは本人が希望する場合のみ。参加者は30代後半から40代がボリュームゾーンです。

 メンティ(メンタリングプログラムを受ける課長クラスの女性管理職)は、メンターを第3希望まで指名することができます。基本的には、これまで業務上接点が無い人を指名するようお願いしているので、参加者はメンターの評判を聞き集めたり、今後チャレンジしてみたい仕事に近いキャリアやバックボーンを持つ人を探したりして決めているようです。なかには子どもがいる女性がいいという人もいます。メンティが希望する人物像なども聞き、最終的には人事部がマッチングしています。

 プログラム期間は1年間。最初にメンター、メンティの顔合わせを兼ねてオリエンテーションを実施。メンタリングプログラムの説明を行います。

 その後は、だいたい月に1度、1回30分~1時間程度、個別に相談する機会を設けてもらっています。基本的にはメンティが主導でスケジュール調整をして面談方法を決定、場所の確保等をして行います。お酒はナシですが、お茶やランチをしながらでも構いません。地方拠点の場合、部長が直属の上司しかいないため、東京や大阪の部長がメンターになることもあります。そのため、遠隔地の場合はスカイプやテレビ会議で行うこともあります。

 過去には1対1ではなくメンターが他の部長を連れてきたり、2組合同でミーティングを行ったりしたこともあります。そのあたりは参加者同士に任せています。毎回メンタリングが終わったら報告書を出す、ということは一切ありません。

 半年後には、事前にメンティに記入してもらったアンケート形式の振り返りシートを基に、メンティが集まり共有の場を設けています。シートには、行った頻度や、話した内容、どんな言葉が響いたかなどを記入してもらいます。同じプログラムに参加している者同士で進捗を共有し合うことで、「進め方がうまくいっていない」「どんな質問をしたらいいのか分からない」といったメンティのちょっとした悩みの解決の参考になるようです。この段階でメンタリングを終了することもできるのですが、緩くつながる形でもいいので残り半年間も続けてみては、とアドバイスしています。

 1年後に、もう一度振り返りのアンケートに記入してもらい、終了です。メンターもメンティもこのプログラムの内容が人事評価に反映されることはありません。