2030年までに、指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%程度にすることを目標としている政府。全体としてはまだまだ低い水準ではあるものの、女性管理職を増やす取り組みや、ARIA世代の女性が長期的なキャリアプランを描けるような支援を行う企業も増えています。そこで、女性管理職研修をはじめ、女性の活躍推進を積極的に行っている企業を取材し、各企業の取り組みを紹介します。
第12回は、スウェーデン発祥のホームファニッシングカンパニーイケアの日本法人、イケア・ジャパンです。イケアでは「Equality(平等)」の精神で、男女ともに平等な機会を与え、すべての国、階級、役職(取締役会と委員会を含む)で、50 対 50 のジェンダーバランスの達成を目指しており、イケア・ジャパンでは女性管理職比率49.5%を達成しています。
上編では、イケア・ジャパン カントリー P&C (People and Culture) マネジャーで人事部長の朝山玉枝さんに、女性活躍推進の取り組みについて聞きました。
「be yourself(自分らしく)」を大切にするカルチャー
―― イケア・ジャパンでは、女性管理職比率が49.5%と伺いました。これだけの成果を上げている理由を教えてください。
朝山玉枝さん(以下、敬称略) 「イケアでは特別な方法やマニュアルなどあるのですか?」とよく聞かれますが、それはないんですよ。
イケア・ジャパンは2006年4月に日本1号店の「IKEA船橋(現IKEA Tokyo-Bay)」を出店し、今年で15周年を迎えます。私はオープン時からこの会社にいますが、当時から「男性だから」「女性だから」という感覚はありませんでした。創業当初から、「Equality(平等)」を強く持っていたのです。
イケアには、「より快適な毎日を、より多くの方々に」というビジョンがあり、「多くの方々」には、お客さまだけでなく、サプライヤーやコワーカー(従業員。共に働く仲間という意味)も含まれます。イケアのコワーカーは人として尊重されていて、「be yourself(自分らしく、ありのままで)」を大切にするカルチャーがあります。
自分のキャリアは自分で選ぶ「ジャングルジム型」
朝山 イケアのカルチャーを実現するために、全世界で共通する3つの大きな柱があります。1つ目はEqual Opportunity(平等な機会)。2つ目はインクルーシブなカルチャー。3つ目は差別のない会社。この3つの価値観が、日々のオペレーションや制度に浸透しています。
例えば、キャリアに関しては、「オープン・イケア」という社内公募制度があります。誰でもが自分で希望をすれば、世界中どのポジションでも、チャレンジする機会があります。会社からの異動命令はありません。
キャリアの描き方も、ジャングルジム型が理想と考えています。キャリアは同じ部署を一直線に上がるだけでなく、いろいろな部署を平行に移動してもいいし、ライフステージによってはペースを落として下がってもいい。自分のキャリアは自分で選ぶもの、という感覚があります。
そのため、イケアの中で、あの人は昇給した、降格したという意識はありません。一般的には、部長から平社員になったら「あの人何かあったのかな」と思うかもしれません。でも、イケアではそういう心配をしなくてもいい。自分のライフステージに合わせて働けばいいんです。
その分、自分で自分の成長に責任を持つということが、一人ひとりに求められています。人と比べなくてもいいというのは、この会社の強みだと思います。
イケアのバリューや3つの大事な価値観を皆が守っていくことで、イケアのカルチャーが続いていくと思います。私は転職組で、イケア・ジャパンに入社してこのカルチャーに触れて驚き、感動したんです。感動することでカルチャーが浸透していく。そのためには、リーダーがお手本でないとだめ。長い歴史の中で毎日の積み重ねが一番大事だと思います。