2020年までに、指導的地位に女性が占める割合を少なくても30%程度にすることを目標としている政府。全体としてはまだまだ低い水準ではあるものの、女性管理職を増やす取り組みや、ARIA世代の女性が長期的なキャリアプランを描けるような支援を行う企業も増えています。そこで、女性管理職研修をはじめ、女性の活躍推進を積極的に行っている企業を取材し、各企業の取り組みを紹介します。

 第6回は味の素です。現在の女性基幹管理職比率は約9%、勤続年数は男女ともに約20年と長く、離職率が約1.6%(定年退職を除く)と低いのが特徴です。2008年からワークライフバランスの取り組みを始め、主に子育て世代の女性が働き続けやすいような制度を導入。2017年には女性だけでなく、誰もが働きやすい環境をつくるための取り組みもスタートしました。同時に「女性人財の育成委員会」が発足。2018年から「アンコンシャス・バイアス研修」を開始しています。

 上編では、味の素人事部人財開発グループの野口奏枝さんとグローバル人事部マネージャーの長井由利さんにアンコンシャス・バイアス研修や女性活躍推進の取り組みについて聞きました。

人を大切にする文化では、配慮が先に来てしまうことも

―― アンコンシャス・バイアス研修を始めようと思ったきっかけを教えてください。

野口奏枝さん(以下、敬称略) 従業員が仕事をするうえでの基本的な考え方を示す「味の素グループWAY」の一つに「人を大切にする」という言葉があります。社員一人ひとりがやりがいを実感して能力を発揮し、そのうえで会社も個人も共に成長することを目指しています。

 ただ、人を大切にする風土があるからこそ、「配慮」が先に来てしまうこともありました。例えば、子育て中の社員には、出張など時間のやりくりが必要な仕事を任せてはいけない、というような配慮です。けれど、やりがいを求めて働くうえで公平な機会提供のためには、必要な配慮は人によって異なるかもしれません。

 新卒女性入社の割合も徐々に高くなり、中途入社者も増えてきています。育児や介護など、ライフイベントを抱えている人も多くいます。こうしたバックグラウンドの違いも含め、一人ひとりが心の底から満足して働いているのか、疑問に感じることもありました。

 そこで、無意識の思い込みを取り払うトレーニングが必要だと感じ、アンコンシャス・バイアス研修を始めました。