意思決定層の女性を増やすための「人財育成」

―― 女性の活躍推進の取り組みは、どのようなことを行っているのでしょうか?

長井由利さん 所定労働時間の見直しやテレワークの推進など、働き方改革は進んでいて、女性が活躍する環境は整ってきています。次の課題は、女性社員に自分もチャレンジしてみよう、自分も管理職になれるのではないか、と一歩踏み出してもらうための「心の育成」です。

 女性基幹職(課長以上を指す)比率は9%と業界平均より高く、今までも女性が活躍してきた企業ではありますが、まだ意思決定層(部下を持つマネジャー)には女性は多くいません。意思決定層の女性が増えなければ、市場環境の変化に企業としてついていけません。

「次の課題は、女性社員に自分もチャレンジしてみよう、自分も管理職になれるのではないか、と一歩踏み出してもらうための『心の育成』です」と話す長井さん
「次の課題は、女性社員に自分もチャレンジしてみよう、自分も管理職になれるのではないか、と一歩踏み出してもらうための『心の育成』です」と話す長井さん

 そこで、女性の経営人材の候補をしっかり育成し、登用していく流れをつくる支援策が必要と考え、2017年に「女性人財の育成委員会」を設置しました。女性社員のポテンシャルと一人ひとりが持つ専門性やスキルなどを把握し、個別の人材育成計画を立て、登用につなげていきます。

 女性人材の育成プログラムの一つに、直属の上司以外のメンターが第三者的な視点からサポートしていくメンター制度があります。サポートを受ける側のメンティは、評価対象者ではない人から客観的にアドバイスをもらうことができます。メンターとなる役員もアンコンシャス・バイアスのトレーニングを受けています。マネジャーとしてのスキル向上につなげられますし、ライン以外の社員を知るというメリットもあります。

 ほかにも、社内には「チャレンジボックス」という制度があります。基幹職一歩手前の職務グレードにいる人材の中で管理職になりたい人は、自ら手を挙げて社内選考に通れば、自己研さんをしたうえで昇格していくという仕組みです。今、チャレンジボックスにいる女性社員を対象に、先輩女性社員と対話する会を企画しています。心配ごとを相談できる場を提供することで、会社の幹部になっていくような未来を描いてもらえるよう、さまざまな企画を考えているところです。

※「下」では、実際に「アンコンシャス・バイアス研修」を受けた女性管理職に話を聞きます。

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取材・文/平野友紀子 写真/鈴木愛子