性別、職歴、学歴など、身近にある「思い込み」

―― 具体的には、どんなアンコンシャス・バイアスの例が挙がり、どんな反響があったのでしょうか。

野口 グループワークでは、性別だけでなく、職歴、学歴、介護や育児をしているといったライフスタイルの違いなどによる、さまざまな「思い込み」が出てきました。分かりやすい例だと、理系出身の人だから数字に強い、営業出身の人だからお酒が強いだろう、などです。

 受講した社員からは、一緒に長く仕事をしていると「この人はこうだ」という思い込みが生まれてしまうので、評価をするときや重要な決断をするときは、一度立ち止まるようにしようと思うという感想がありました。

 実際に各職場では、「今の発言はバイアスかもしれません」という会話も生まれてきているようです。一度立ち止まる勇気を持つ、振り返ってフラットに見てみる、逆方向から考えてみる、という視点は仕事にも生きると思います。

味の素社内で開かれた経営メンバー向けアンコンシャス・バイアス研修の様子
味の素社内で開かれた経営メンバー向けアンコンシャス・バイアス研修の様子

目指すのはイノベーションが起きやすい環境づくり

野口 今後、一層価値観が多様化していく中で、会社としての成長を考えたときに、イノベーションが起きやすい環境づくりが重要です。そのためには、さまざまな意見が活発に出てくる職場づくりが必要です。

 アンコンシャス・バイアスによって、誰かの芽を摘み取っているかもしれないし、何かに気づくチャンスを失っているかもしれません。まずは、アンコンシャス・バイアスがあることを知り、気づくことを社員に促していきたいです。最終的には、バイアスをコントロールできる仕組みをつくっていきたいと思います。