2020年までに、指導的地位に女性が占める割合を少なくても30%程度にすることを目標としている政府。全体としてはまだまだ低い水準ではあるものの、女性管理職を増やす取り組みや、ARIA世代の女性が長期的なキャリアプランを描けるような支援を行う企業も増えています。そこで、女性管理職研修をはじめ、女性の活躍推進を積極的に行っている企業を取材し、その取り組みを紹介します。

 第5回は、新生銀行グループです。2019年6月から「女性人材育成プログラム」を開始し、女性社員を計画的に育成する体制を整備しています。

 下編では、実際に女性人材育成プログラムに参加している新生銀行 リテール営業部第一部統轄次長の和田裕美さんと、和田さんの「スポンサー役員」を務めている新生銀行 常務執行役員 法人営業総括の薦田(こもだ)貴久さんに話を聞きました。

【上編】新生銀行「スポンサー役員」が選抜女性社員を育成


腰掛けのつもりが、女性初の支店長に

―― 今までのキャリアについて教えてください。以前から管理職を目指していたのでしょうか。

和田裕美さん(以下、敬称略) 新卒で日本長期信用銀行(長銀)に一般職として入行しました。当時1993年は女性のキャリアアップという概念がまだない時代で、私も制服を着て、いわゆるOLとして仕事をしていました。その後1999年に長銀が経営破綻して、人事制度として一般職がなくなり全員総合職になったのですが、まずはここで、仕事に対する覚悟ができました。

 その後、新生銀行として再スタートし、PowerFlex(パワーフレックス)いう個人向け口座を開発するプロジェクトが発足したのですが、全国から100人集められる中の一人として参加しました。「絶対にできるわけない」と思っていたミッションを半年かけてやり遂げたとき、初めて仕事の面白さ、チャレンジすることの楽しさを実感しました。20代後半の頃です。

 しばらくの間、店頭でのコンサルティング業務に携わっていましたが、その後、リテールビジネスのトップのポジションに外国人がやってきて、男性も女性も関係ない、学歴も関係ない、年齢も関係ないと、女性に限らず様々なタイプの人材が管理職に登用されることになりました。その中で、私もコンサルタントを束ねるマネジャーとして、リーダーに就任しました。

 その後、2006年に最年少で支店長に就任し、支店長業を約10年間務めました。現在は営業部統轄次長という、複数の支店を統括して営業推進をする、部長に次ぐ立場のリーダーです。私のラインだけですと部下は20数人ほどですが、部長とともに約100人いる部全体を見ています。足元の営業推進を行うとともに、次世代のリテール(個人向け金融)ビジネスはどうすればいいかを考えながら、管理監督者の立場から各支店を回っています。

管理職になる自分が想像できなかった

―― 女性人材育成プログラムの対象者に選ばれたときは、どんな気持ちでしたか。

和田 いやいや、私なんてまだ……と思いました。支店長としての経験は長く、マネジメントはしてきたけれど、狭い世界の中でしか生きてきていない、リテールビジネスしか知らない、巨大組織を動かしたことがない、とやったことがないことばかりが自分の頭の中でどんどん膨らんでいきました。

「『育成人材』に選ばれた当初、『やったことがないこと』がどんどん膨らんでいきました」
「『育成人材』に選ばれた当初、『やったことがないこと』がどんどん膨らんでいきました」