日本全国を束ねるアネゴが重視する「言語化」

羽生 続いて、6月の特集「アネゴ管理職のすごい人間力」の話題です。ARIA読者の38%は課長以上の管理職。日本政府は「2020年までに管理職の30%を女性にする」目標を掲げていますが、軽々超えています。

 この特集で取材したのは大企業の執行役員クラスの人ばかりです。皆さん、すごいのは「人間力」。ビジネスで大ピンチに遭遇したとき、どうやってチーム全員で乗り切ったのか、メンタルの強さについて記事にまとめました。

 今日はそんな「すごいアネゴ」が二人いらっしゃるので、直接お話を聞きたいと思います。牛窪さんはスタッフ30人の会社の経営者ですし、網野さんはイイオンナプロジェクトを日本全国に広げて、どちらもアネゴ感が強いですよね。

網野 アネゴって、私のイメージでは「オトコ化している女性」なんです。男性社会で闘って伸びてきた印象があります。私自身は、女性らしさや強みをうまく生かしながらチームを伸ばしたいと思っています。

羽生 「俺についてこい」ではなく、母性や女性のコミュニケーション能力を生かしたチームリーダーですね。取材した方々もすごい実績があるのに、お目にかかるとチャーミングな一面がありました。

 牛窪さんは経営者ですから、何かあったら場合、自分が腹をくくる覚悟があるのでしょうか。

女性のリーダーは「おしなべて、ふわっとしてチャーミングな方が多い」と語る羽生編集長
女性のリーダーは「おしなべて、ふわっとしてチャーミングな方が多い」と語る羽生編集長

牛窪 覚悟はありますが、私は、そんなかっこよくないですよ。最近飼い始めたペットロボットの「AIBO(アイボ)」すらしつけられないんですから、部下にも強く言えません。むしろ、支えてもらっています。

 うちのスタッフが取引先と交渉する際、何か困ったことがあったら、「すみません、牛窪がわからずやで。私から説得しますので」と、私のせいにしていいよと、伝えています。

羽生 いい連携ができていますね。

牛窪 経営者には「ミッションステートメント」が大切だと思っています。個々人が何のために生きていて、何のためにこの仕事をするのか。それを自分で振り返り、最終的に企業のミッションステートメントにするのです。

 私の場合は「おひとりさま」という言葉に出合って、女性が一人でも立って歩けるような世の中にしたいという思いで仕事をしてきました。それに共感する人たちと、同じ方向を向けるチームにしたいですね。

 だから、大きな仕事を受注するときは、スタッフに「みんな、この仕事をやりたい?」と聞いています。最終的には収支より、何のためにこの仕事をするのか、スタッフと共感することを重視します。

羽生 ありがとうございました。網野さんは日本全国にメンバーが大勢いらっしゃるので、共通のミッションでそろえるのは大変そうですね。

網野 昨年初めて47都道府県にプロジェクトを広げたとき、自分が本当にやりたいことは何なのか言語化して人に伝えるように意識しました。広く、正しく、みんなに伝えるために。

羽生 言語化って大事ですよね。私はいろいろな社長にインタビューしていますが、口を酸っぱくして毎回言葉にして従業員に自分の思いを伝えている方が多かったです。アネゴ管理職を語るうえで、「言語化」は欠かせないキーワードですね。

 まだ、たくさんお話を伺いたいのですが、そろそろお時間になりました。続いては読者の質問コーナーに入りたいと思います。(後編に続く)

熱心にメモを取りながらトークセッションに聴き入る来場者
熱心にメモを取りながらトークセッションに聴き入る来場者

取材・文/高橋美穂 写真/稲垣純也