定年後を見据えた働き方、生き方を意識し始めたシングル会社員の悩みに、「キャリア」と「お金」の両面から実践的なアドバイスをお届けします。相談者は前回に続き、父親の介護について悩んでいる50代の女性。実際の介護をどう回していくかという問題とあわせて、やはり気がかりなのは介護にかかる費用です。介護保険の自己負担額や対象となるサービス、負担を軽減する制度などについて、ファイナンシャルプランナーの高山一恵さんが解説します。

相談者No.5 チエさん(53歳、教育)

中堅の教育サービス系企業に20年以上勤務し、都内で1人暮らし。隣県(電車で1時間程度の場所)に暮らす両親がいる。つい先日、父親(79)が病気で入院。退院後は自宅療養を見込んでいるが、高齢の母親(77)に介護をすべて任せるのは難しく、他に介護を担える人間は一人っ子の自分だけ。勤務先ではこれまで介護休業を取った人はおらず、仕事を辞めて介護をすべきか悩んでいる。介護費用がどのくらいかかるのかも分からず、不安に思っている。

お金編アドバイザー 高山一恵さん(ファイナンシャルプランナー)

介護にまつわる費用の平均値は「54.5カ月で494万円」

 お父様が病気で入院して自宅療養する見込みとのことですが、チエさんのお母様も高齢ですから、チエさんが色々と動かなくてはならないのは容易に想像がつきます。

 中でも気にかかるのが介護費用ではないでしょうか。ましてチエさんは一人っ子。高齢の親に代わって介護費用を自分が負担することになるかもしれないと思うと不安でいっぱいのことでしょう。

 では実際、介護が必要になった場合、どれくらいの費用がかかるのでしょうか。

 在宅介護の費用には、訪問介護やデイサービス、福祉用具など介護保険の対象となるサービスの利用にかかる費用と、医療費やおむつ代といった、介護サービス以外の費用があります。利用者の要介護度や介護期間によっても異なりますが、おおよその目安になる費用を見てみましょう。

 公益財団法人生命保険文化センターが2018年に行った「生命保険に関する全国実態調査」によると、住宅改修や介護用ベッドの購入などにかかった一時費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)は、平均69万円、月々の費用(自己負担分)は、平均7万8000円、介護期間は、平均54.5カ月となっています。

 単純に計算すると、介護にかかる費用の総額は、平均で約494万円となります。仮に介護期間が10年以上続いた場合には、1000万円を超えることに。しっかり介護費用について考えておく必要がありそうです。

 上記では一般的な介護費用を見てきましたが、チエさんの親の収入によっては、介護サービス費の負担は大きくなります。