定年後を見据えた働き方、生き方を意識し始めたシングル会社員の悩みに、「キャリア」と「お金」の両面から実践的なアドバイスをお届けします。今回の相談者は親の介護問題に直面している50代の女性。勤務先に介護休業を取った人はおらず、仕事を辞めざるを得ないのかと悩んでいます。そんなチエさんに、「早まらないで」と社会保険労務士の佐佐木由美子さん。仕事と介護を両立するためのポイントを詳しく解説していきます。

相談者No.5 チエさん(53歳、教育)

中堅の教育サービス系企業に20年以上勤務し、都内で1人暮らし。隣県(電車で1時間程度の場所)に暮らす両親がいる。つい先日、父親(79)が病気で入院。退院後は自宅療養を見込んでいるが、高齢の母親(77)に介護をすべて任せるのは難しく、他に介護を担える人間は一人っ子の自分だけ。勤務先ではこれまで介護休業を取った人はおらず、仕事を辞めて介護をすべきか悩んでいる。介護費用がどのくらいかかるのかも分からず、不安に思っている。

キャリア編アドバイザー 佐佐木由美子さん(社会保険労務士)

毎年約10万人が介護のために離職、社会問題に

 「自分の親はまだ大丈夫」と思っていても、ある程度の年齢になれば誰しも、いつ介護の必要に迫られるか分かりません。2025年には団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、医療や介護問題が急増するであろう「2025年問題」は以前から指摘されていました。ARIA世代にとって、決して他人事の話ではないのです。

 チエさんも、突然のことで大変不安を感じていることと思います。ただ、介護のために早まって仕事を辞めようと思わないでください。これは声を大にして伝えたいことです。

 「今の仕事は忙しすぎるから介護はできない」「会社に迷惑をかけたくない」……そのように思われる方は少なくありません。実際、毎年約10万人もの人たちが介護離職をしており、大きな社会問題にもなっています。ただ、その後もチエさん自身の長い人生があるのです。

 一人娘であるチエさんは、「自分しか面倒を見られる人はいない」と思っているようですが、全部自分でやろうと気負わないことです。もし、シングルであるチエさんが仕事を辞めてしまったら、その後の生活はどうなるのでしょうか。親の年金や資産に頼って生活することはできるかもしれませんが、介護は終わりの見えない持久戦。経済的に余裕がなくなると、介護サービスを控えるようになり、自分で何でもやろうと負担が増える懸念もあります。精神的にも厳しくなってくるでしょう。介護が終わっていざ再就職をしようと思っても、心身ともに疲弊しきっていては、かなり厳しい状況になると言わざるを得ません。

 仕事は続けることを前提に、どうしたら仕事と介護をうまく両立していけるか考えていきましょう。次のページから、両立するための3つのポイントについてお伝えします。