定年後を見据えた働き方、生き方を意識し始めたシングル会社員の悩みに、社会保険労務士の佐佐木由美子さんとファイナンシャルプランナーの高山一恵さんが、「キャリア」と「お金」の両面から実践的なアドバイスをお届けします。相談者は前回に続き、乳がんの手術をすることになった47歳のアヤコさん。治療費の目安は? 健康保険で受けられる保障は? 民間の医療保険の情報と併せて詳しく解説します。

相談者No.2 アヤコさん(47歳、メーカー)

大手メーカーに勤務。両親と実家暮らし。就職氷河期に新卒で入社して以来、ずっと真面目に管理部門で働いてきた。マネジメント経験なしの一般職で、生活は堅実派。

先日、健康診断で乳がんが見つかり、来月手術することに。会社に迷惑をかけたくないので退職も考えたが、年齢やこれまでのキャリアを考えても、再就職できる自信がない。ただ今は、休職しても職場に戻ってこられるか、治療と仕事を両立していけるか不安に思っている。これまで実家暮らしだったこともあってコツコツと貯蓄はしてきているが、治療費もかかりそうで心配。

お金編アドバイザー 高山一恵さん(ファイナンシャルプランナー)

 アラフィフともなると、誰しも体に何かしらの不調を感じるようになるものですが、女性疾病にかかる人も少なくありません。今回の相談者のアヤコさんは、今まで一生懸命、堅実に仕事を頑張ってきたとのこと。50歳を前に突然乳がんが見つかり、とてもショックを受けていると思います。

 子宮頸(けい)がん、子宮筋腫、乳がんなどの女性特有の病気の患者数は約149.3万人にのぼります(厚生労働省「平成29(2017)年患者調査」より)。特に乳がんは30代後半から急増し、女性の社会進出によるライフスタイルの変化で出産を経験しない人が増えていることや、欧米型の食事の浸透といった要因も相まって、患者数も年々増加傾向にあります。

 今や日本人女性の9人に1人が乳がんになる時代。アヤコさんの事例は、ARIA世代にとって決して他人事ではありません。

早期の乳がんなら医療費の自己負担は月に最大9万円程度

 病気になると心配なのが医療費です。特にがんの治療というと高額なイメージがありますから、アヤコさんも不安なご様子でした。

 では、実際に乳がんの治療にはどれくらいかかるのでしょうか? がんのステージによって違ってくると思いますが、今回は乳がんが早期発見されたケースでお話しします。

 乳房温存手術を受けるために5日間入院し、退院後に4~6週間の放射線治療を含む各種治療を4カ月間受けたとします。放射線治療を受ける場合、20回〜30回が標準回数となり、全体の治療期間は4カ月~6カ月程度かかるのが一般的です。

 上記のケースでは、健康保険が適用になる手術、検査、投薬、入院の費用で約63万円、通院しながらの放射線治療費が約76万円で、医療費の合計金額は、139万円程度になります。

 健康保険が適用される治療については、自己負担は医療費の3割なので実際に窓口で支払うお金は約42万円です。また、「高額療養費制度」により、自己負担の上限額が決められており、病院の窓口で上限額以上の支払いをしても、超えた分は後で払い戻しが受けられます。高額療養費制度を利用すれば、1カ月当たりの実質的な自己負担は最大9万円程度になります(下記図表のウの区分で計算した場合)。