定年後を見据えた働き方、生き方を意識し始めたシングル会社員の悩みに、社会保険労務士の佐佐木由美子さんとファイナンシャルプランナーの高山一恵さんが、「キャリア」と「お金」の両面から実践的なアドバイスをお届けします。今回の相談者は、メーカーの管理部門で堅実に働いてきた一般職の女性。「病気治療と仕事の両立」に不安を抱えているようで……。

相談者No.2 アヤコさん(47歳、メーカー)

大手メーカーに勤務。両親と実家暮らし。就職氷河期に新卒で入社して以来、ずっと真面目に管理部門で働いてきた。マネジメント経験なしの一般職で、生活は堅実派。

先日、健康診断で乳がんが見つかり、来月手術することに。会社に迷惑をかけたくないので退職も考えたが、年齢やこれまでのキャリアを考えても、再就職できる自信がない。ただ今は、休職しても職場に戻ってこられるか、治療と仕事を両立していけるか不安に思っている。これまで実家暮らしだったこともあってコツコツと貯蓄はしてきているが、治療費もかかりそうで心配。

キャリア編アドバイザー 佐佐木由美子さん(社会保険労務士)

精神的に参っているときに結論を急ぐのは禁物

 アヤコさん、診断結果にショックを受けている上に、仕事やこれからの生活について頭がいっぱいだと思います。がんと診断を受けた人のうち2割が、治療のために仕事を辞めているという調査結果もあります。精神的に参っているときに、焦りや不安から結論を急がないようにしましょう。

 一生のうち、がんと診断される確率は今や2人に1人といわれ、20歳代から50歳代前半までは、男性よりも女性のがん罹患(りかん)率が高くなっています。がんといえば、かつては不治の病ともいわれていましたが、近年の診断技術や治療方法の進歩によって生存率は大きく向上。「長く付き合う病気」に変化しつつあり、がんになったからといって離職しなければならないことはありません。むしろ、近年の離職率は低下傾向にあります。

 休職制度を活用して仕事を休み、まずは治療に専念することです。こういうときのために、会社員には休職制度があります。会社に迷惑をかけたくない気持ちも分かりますが、あまりご自身を追い詰めないでください。

 もし体調が許すのであれば、担当している業務の進捗状況や留意事項を書面にまとめ引き継ぐとよいでしょう。ただ、入院前の準備期間が十分取れない場合もありますので、引き継ぎができなかったからといって、気にし過ぎる必要はありません。一時的に業務が滞ったとしても、大抵は部署内でカバーできるものです。本人の病気や家族の介護など、不測の事態はいつ誰にでも起こり得るもの。お互いさまだと思って過剰に遠慮しないことです。

 今後の治療のスケジュールや体力回復の見通しなどについて、主治医から詳しい情報を得た上で会社に相談し、仕事と治療の両立についてきちんと話し合いの機会を持ちましょう。産業医にも話し合いに参加してもらうと安心ですね。