定年後を見据えたシングル会社員のキャリアとお金の悩みに、専門家がアドバイスをする「相談室」がオープンしました。相談者は前回に続き、大手出版社に勤務し、ヨガインストラクターへの転身を考えている46歳のマキさんです。転職によって収入の減少が見込まれるものの、貯蓄はかなり少なめ。ゆくゆくはおひとりさまの老後を高級老人ホームで過ごしたいと思っている彼女に必要な「お金の備え」とは?

相談者No.1 マキさん(46歳、出版)

大手出版社に勤務する編集者でバツイチ。激務だが給与は高く、10年前に職場近くの青山にマンションを購入した(ローンがまだ20年残っている)。人生を楽しむための出費は惜しまないタイプ。お酒が大好きでファッションにも興味があり、何かと生活にお金がかかる。そのため、収入の割に貯蓄があまりない。

ここ数年、ハードな生活からアロマやマッサージなど癒やし系の趣味にはまっていくうちに、癒やしの世界の仕事に興味を持つように。ヨガインストラクターに転身したいと本気で考え始めている。

お金編アドバイザー 高山一恵さん(ファイナンシャルプランナー)

高収入なのに貯蓄が300万円。その原因は?

 マキさんのように、これまでハードに仕事をしてきた女性が癒やし系の仕事に転身したいというケースは少なくありません。未経験のヨガインストラクターに転身するとなると、初めのうちは特に現在よりも大幅に収入が下がる可能性が高いですから、当面の収入減少分をカバーする「貯蓄」があるかないかは大きな問題です。

 マキさんの勤務先は大手出版社ですから、同世代の女性と比較しても年収は高めです。当然、それなりに貯蓄はあるだろうと思いきや、300万円しかないことが判明しました。

 実は、マキさんのように都心で暮らす高収入の女性が貯蓄できていないというケースは珍しくありません。というのも、激務のため基本は外食、タクシー利用は当たり前、買い物でストレス発散し、コンビニに寄ってはちょこちょこ買い、といったように、何かと余計な支出をしてしまう傾向にあるからです。

 加えて日常の生活費も高くなりがちです。例えば日々の買い物は高級スーパーの紀ノ国屋、衣類・バッグ・靴は百貨店で購入(ファミリーセールは活用せず)、飲料水用にウオーターサーバーを設置し、こだわりの高級電化製品を愛用するなど、平均的な年収の人たちの家計に比べると、全体的にワンランク上の買い物をしているようです。

都心で暮らすキャリア女性は何かと支出がかさみがちで、高収入なのに貯蓄が少ないというケースは珍しくない(写真はイメージ)
都心で暮らすキャリア女性は何かと支出がかさみがちで、高収入なのに貯蓄が少ないというケースは珍しくない(写真はイメージ)

 買い物すべてにおいて単価が高いので、結果的に支出額がかさんでしまうというわけです。年収が高い割に貯蓄がないという人の多くはここに原因があるケースが多いようです。

 今後ヨガインストラクターに転身したいということであれば、今からお金の使い方を見直し、生活をダウンサイジングさせ、貯蓄を増やしておく必要があります。マキさんは家計管理もほとんどできていなかったようなので、まずは支出の分析から行いましょう。