自然への思い――自分をなだめながら、東京で仕事にまい進

 培った英語力(TOEIC900点以上)を生かし、帰国後は外資系のマーケティング・リサーチ会社やPR会社に勤務。「勤務先はキラキラした都心のオフィスビル。どこに勤めてもストレスで行き詰まり、長続きしませんでした」

 3社目を辞め、34歳で向かった先は北海道。「農家に住み込みをしながら、見晴らしの良い丘で2カ月間、秋の収穫を手伝いました。自分が自然とのつながりを強く求めていたことに気付き、『このままここに住めたら幸せだろうな』と思いました。ただ一方で、現実逃避をしているだけとも感じた。結局、『上手にストレスコントロールをしながら、これまで通り東京で働くべきだ』と自分をなだめ、帰京を決めました」。

 その後は大手PR会社を経て、以前、別の会社に勤めていたときの上司に海外高級ブランド企業に誘われて転職。広報アシスタント業務に携わり、それなりにやりがいもありました。

 「ただ、不要な残業はしないし、有給休暇も積極的に取っていた私は社内では異分子で、次第に心がすり減っていきました」

 そんなとき求めたのは「学び」でした。「短大進学時は、『就職に有利だから』と親に勧められるまま、さして興味もない秘書科を選択。でも40歳を過ぎ、何かに有利、といった目先の物差しに縛られず、ただ自分が引かれるものを追究したいと思うようになったんです」

左は、からむしの茎から取り出した繊維。真ん中は、それをよりつないで長い糸にしたもの(下2つは草木染め)。右はからむしの糸で織られたコースター
左は、からむしの茎から取り出した繊維。真ん中は、それをよりつないで長い糸にしたもの(下2つは草木染め)。右はからむしの糸で織られたコースター