「都会を卒業して、田舎でゆったり暮らしたい」――誰しも、一度はこう思ったことがあるのではないでしょうか。とはいえ、家族の説得、家や仕事探し、新たなご近所さんとのお付き合いなど、越えるべき数多のハードルを前に「移住は夢物語」とあきらめている人も多いはず。そこで、国内の自然あふれる地方に移り、新たな生活をスタートさせた「移住の先輩」に移住成功の極意を聞きます。

(上)北海道東川に移住しカフェ経営「東京は味わい尽くした」
(下)東川町に単身移住。不安、不便、不足だらけでも毎日幸せ ←今回はココ

「いつか自分のお店を」の夢を東川でかなえた

――結婚、離婚を経て、移住希望者が注目する北海道東川町での一人暮らしがスタート。知り合いもほとんどいない土地で右も左も分からない中、住む場所と仕事探しから壁にぶつかります。「最初はアパートを探していたんですが、全然空きがなくて。東川は移住に力を入れている町なのですが、当時は移住したい人と住む場所との需要と供給が合っていなかったんです。仕事は、バイト先のカフェで社員として雇用するという話もいただいたんですが、多少苦しくても自分の行き先は自分で考えなきゃ、とありがたくもお断りしました

東川町「ハルキッチン」オーナーの岩淵亜夕子さん。地元産を中心に、東川近郊の食材も取り入れた日替わりメニューや焼きカレーなどが人気
東川町「ハルキッチン」オーナーの岩淵亜夕子さん。地元産を中心に、東川近郊の食材も取り入れた日替わりメニューや焼きカレーなどが人気

 この先の働き方を考えたときに大きくなっていったのは、以前から頭にあった「いつかお店を開きたい」という思い。自分でお店を持つべく、賃貸を中心に一軒家などを見て回る中、出合ったのが現在の家付き、店付きの物件でした。

理想の物件は「分譲」のみ 全財産をはたいて購入!

 「お店をやるなら市街地から外れた場所がいいなと思っていて、まさに理想通り! お客さん用の駐車場も車が止めやすく、裏には畑があり自家栽培もできる。前に住んでいた方がカフェを経営していたのですが、成功して市街地に移るという前向きな譲渡で、マイナス面がほとんどありませんでした。唯一のマイナス面は、この物件が賃貸ではなく分譲だったので、決めたら私の全財産がなくなるということでした(笑)。

 大きな買い物なので迷いましたが、マーケティングの仕事をしている東京の友人に相談したら『……ありだね』と言われて『じゃあ買います!』と。ただ、東京に住む母には大反対されましたよ。とんでもない! と。どこか家を借りて、働き先を探せと言ったきり、2カ月くらい口をきいてくれませんでした。でも賃貸だってお金はかかるし、ローンは組まず今あるお金で買って、ダメだったら働きに出ようと。とにかく住むところがないと困るので、決めちゃったんです」