紅茶のお店を出せば、すべての経験が生きる
「ここで紅茶専門店を出せば、私のこれまでの経験が全部生きると思ったんです。何のために今までの人生があったのかと思うと、それは未来に生かすためでもある。今生かさなくていつ生かすのと思って。ちょうどそのとき私は50歳で、チャレンジするにはいい節目だった。だから決断することができたのです」
また、お店を出したもう一つの理由は、商店街に関わりを持ちたかったからだという。子どもの頃に母と買い物に出掛けた商店街。そこに出店することで地元の人としっかり向き合いたいと思った。「地元の人と向き合わないとよさも悪さも分からない。分からないまま批判しても自分の成長になりません。地元の人たちを理解し、学ぶことも大事だと思いました」
現在の斉藤さんは、このお店を拠点に活動するのみならず、2019年には5冊目の本である『紅茶セラピー』(ワニブックス)を出版。東京時代のネットワークを生かし、首都圏のFMラジオに出演したり、英国ツアーを企画して同行したりするなど、移住後も変わらずに「紅茶の伝道師」として活躍している。移住してから、2冊の本を出版したが、いずれもオファーは東京の出版社から。執筆活動に関して、地方在住のハンディやデメリットを感じることはないという。物理的な距離はあるが、それをカバーしようという工夫は、他の仕事にも役立っている。
「移住に関してはまだまだ自分は発展途上。移住のよさもつらさもまだまだ味わっていくことになるだろうと思います。でも、私にはここで結婚してここの暮らしを選択したという責任がある。幸せになりたいと思って選択したこの責任が、よりよくしていきたいという自分の意欲を形作っています」
移住前後の満足度を尋ねると、東京の暮らしは100点満点。暮らしも仕事もすべて気に入っていた。一方、大館の暮らしは80点。東京比でマイナス20点だが、斉藤さんいわく、 暗黒時代の2016年はマイナスだったので、よく80点まで盛り返したという思いがある。