40歳で思い切って東京から長野県富士見町に移住。築60年の小屋に住み、家族5人で送る冷蔵庫も電子レンジもない暮らしに、「それでも困ることはない」と話す増村江利子さん。移住後に始めた新たな挑戦とは? 増村さんの移住ストーリーに迫る後編です。

(上)消費社会への疑問…長野に移住し築60年の小屋をリノベ
(下)冷蔵庫もレンジもナシ「持たない暮らし」を移住先で実践 ←今回はココ

子連れで移住後、古い小屋に転居

 東京から子連れで長野県富士見町に2014年に移った後、2人の子どもが生まれ、夫の徳永青樹さん、11歳から1歳までの子ども3人と暮らす増村江利子さん(47歳)。移住以来、DIYを重ねながら7年暮らした町内のトレーラーハウスから、21年末、すぐ近くの「古い小屋」に転居。味わい深い古材で床をふき替えたり、ロフトを設置したりといったリノベーションを進めつつ、新居での暮らしを整えているところだといいます。

 トレーラーハウスを所有する大家さんと知り合ったきっかけは、その地域の観音堂の補修工事を徳永さんが依頼されたこと。建築関係の仕事をしている大家さんに「補修工事が完璧」だと気に入られ、祭りに呼ばれるようになり、地域に顔見知りが増え、家も貸してもらえることになったのだそう。

 「野菜を食べきれないほどもらったときは、近所に配り歩くし、いつも元気なおばあちゃんが足を引きずっているのを通りすがりに見かけたら、電話でなく『足の具合どう?』と直接、様子を見に行っちゃう。元からあるコミュニティーに入らせていただくという感覚で、自分たちにできることをしてきました」。集落の人々は今や、「親戚や友達のよう」な大切な関係です。

2021年から、原料が竹100%のトイレットペーパーの定期便「バンブーロール」を提供する増村江利子さん。不動産業者を介して家を借りるという慣習は、あくまで都会の常識。昨年末から暮らし始めたこの家も、地域に暮らし、周囲の人々の信頼を得る中で、「ここに住まないか」と声をかけてもらったもの
2021年から、原料が竹100%のトイレットペーパーの定期便「バンブーロール」を提供する増村江利子さん。不動産業者を介して家を借りるという慣習は、あくまで都会の常識。昨年末から暮らし始めたこの家も、地域に暮らし、周囲の人々の信頼を得る中で、「ここに住まないか」と声をかけてもらったもの
「小屋」と呼ぶ家のキッチンには電子レンジも炊飯器もない。「鍋があれば事足りるし、鍋で調理した方がおいしく感じます」。
「小屋」と呼ぶ家のキッチンには電子レンジも炊飯器もない。「鍋があれば事足りるし、鍋で調理した方がおいしく感じます」。

 仕事においても新たな挑戦に乗り出しました。これまで通り、Webマガジンなどの編集を続ける一方、友人と共同で、サステナブル(持続可能)な商品やサービスの開発を行う「おかえり株式会社」を設立。日本唯一の竹で作ったトイレットペーパーの定期便「バンブーロール」のサービスを開始したのです。