食料を買わなくても、冷蔵庫はなくても暮らせる

 仕事に取り組む一方、毎日の暮らしに真摯に向き合う増村さん。「あって当然」と思いがちなモノやサービスが本当に必要か、「自分が納得できる物差しを見つけるための暮らしの実験」を続けてきました。移住後、「これからはローカリズムの中で生きる」と諏訪郡内に支店のないメガバンクの口座を解約。「たくさん貯蓄をして、お金で食料を入手するのではなく、畑を耕して、食料は自分で作ればいい」という考え方に。そして真夏でもクーラーいらずの富士見町では「食材を冷やして保存する必要もない」、と冷蔵庫も手放しました。

 「それでも別に困ることはなく、ふつうに暮らせています」

 「未来の子どもたちのために、そろそろ一人ひとりの大人が消費社会を卒業し、持続可能な暮らしへ移行していかないと」。今後目指すべき、身の丈に合ったシンプルな暮らしの形を、富士見町の小さな家でつくり、発信していく。実践者・増村さんの日々はこれからも続きます。

古材を使って店舗や住宅などの空間をリノベーションする、「大工仕事もする1級建築士」の夫・徳永青樹さんと。暖房にも調理にも活躍するまきストーブは、溶接をなりわいとする地元の知り合いの手作り
古材を使って店舗や住宅などの空間をリノベーションする、「大工仕事もする1級建築士」の夫・徳永青樹さんと。暖房にも調理にも活躍するまきストーブは、溶接をなりわいとする地元の知り合いの手作り
床材として用意した古材。今回のリノベーションでは結局使わなかったものの、「グラスウールなどの断熱材ではなく、間に和紙やコルク、またはもみ殻くん炭を挟むことでどこまで保温性が高まるか、この古材と組みあわせて試したい」と徳永さん。これも「暮らしの実験」のひとつ
床材として用意した古材。今回のリノベーションでは結局使わなかったものの、「グラスウールなどの断熱材ではなく、間に和紙やコルク、またはもみ殻くん炭を挟むことでどこまで保温性が高まるか、この古材と組みあわせて試したい」と徳永さん。これも「暮らしの実験」のひとつ

取材・文/籏智優子 構成/市川礼子(日経xwoman ARIA) 写真/砺波周平